金総書記は今月10日午後に首都・ピョンヤン(平壌)を専用列車で出発し、12日早朝にロシア入りした。13日、ロシア極東のボストーチヌイ宇宙基地を訪れ、プーチン大統領の出迎えを受けた。基地に展示されている宇宙船などを見て回った後、プーチン大統領との首脳会談に臨んだ。両首脳が会談するのは2019年4月以来、約4年半ぶりのことだった。会談でプーチン大統領は「経済協力や地域情勢などを話し合う必要がある」と述べた。これに金総書記は「帝国主義と対抗していくために結束を維持できると確信している。両国関係を最重視して発展させていく」と強調。また、ロシアによるウクライナ侵攻を念頭に「ロシアは自らの権利と安全などを守るために正義の偉業を進めている」と支持する考えを示した。
会談で両首脳は、軍事技術協力に関し何らかの合意が交わされた可能性が指摘されている。韓国の聯合ニュースは「双方は利害関係により、ウクライナ侵攻のためにロシアが必要としている砲弾などの通常兵器を北朝鮮が提供し、その見返りにロシアが北朝鮮に偵察衛星をはじめとする先端軍事技術を与える取引をした可能性がある」と伝えた。また、北朝鮮は今回の金総書記の訪露に、軍部の実力者や軍需産業の責任者を多数同行させていたことが確認されている。韓国紙のハンギョレは「北朝鮮の訪露団の面々を見ると、砲弾と先端軍事技術を交換する形の朝ロ兵器取引の意図がうかがえる」と指摘した。
こうした動きに日米韓は警戒を強めており、日本の秋葉剛男国家安全保障局長と韓国のチョ・テヨン国家安全保障室長、米国のサリバン国家安全保障担当大統領補佐官は14日に電話協議を行った。北朝鮮とロシアが軍事協力について協議したとみられることに強い懸念を示した上で、北朝鮮とロシアが武器の取引を行えば、国連安全保障理事会の決議に反する行為となり、両国は相応の代価を支払うことになると警告した。
だが、韓国の公共放送KBSによると、北朝鮮は既にロシアに対して弾薬や兵器を提供しているとの見方が出ている。KBSによると、ウクライナ国防省の情報機関「情報総局」のキリル・ブタノフ局長は13日、現地メディアに対し、北朝鮮とロシアは1か月半ほど前から協定を結んで、兵器の提供が既に始まっていると語ったという。ちなみに1か月ほど前にはロシアのショイグ国防相が北朝鮮を訪問している。また、韓国紙・東亜日報によると、韓国政府も北朝鮮がロシアに対し砲弾など従来型の兵器を提供していることを数か月前から把握していたという。同紙は「今回の金総書記のロシア訪問は、プーチン大統領が北朝鮮の積極的な支援に謝意を示したものである可能性がある」と報じた。
金総書記は17日、専用列車で帰国の途についた。翌18日の国営「朝鮮中央テレビ」は、駅で行われた見送りの式典や金総書記が専用列車で出発する写真を報じた。また、今回の金総書記のロシア訪問について「両国関係の強化と発展の歴史において、新たな転換的局面を切り開いた」と強調した。
北朝鮮は来月10日に朝鮮労働党の創立記念日を控えている。創立記念日では、今回の金総書記のロシア訪問を外交成果として誇示するものとみられる一方、軍事協力を含めて対ロ関係強化を一層加速させるものとみられる。朝ロの「蜜月時代」到来を印象付けた今回の金総書記のロシア訪問。両国の急接近について、韓国の統一部(部は省に相当)は「今後の協力の動向を注視する」としている。
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