「明治日本の産業革命遺産」は、長崎など8県11市にまたがる23の構成遺産から成る。西洋から非西洋世界への技術移転と日本の伝統文化を融合させ、1850年代から1910年までに急速な発展を遂げた炭鉱や、鉄鋼業、造船業に関する文化遺産で、2015年に世界文化遺産に登録された。
しかし、韓国は登録時、23の施設の中に含まれる軍艦島では多くの朝鮮人が強制労働させられ犠牲になったと主張し、登録に反発した。これに対して日本は、「犠牲者を記憶にとどめる対応措置をとる」と表明し、2020年6月、東京に「明治日本の産業革命遺産」の全体像を紹介する産業遺産情報センターを開設した。だが、センターでは朝鮮半島出身者が働いていたと明示する一方、差別的な対応はなかったとする元島民の証言も紹介し、韓国側は「展示は強制労働させられた朝鮮半島出身者の被害が明確に説明されておらず、遺産登録時の約束が守られていない」などと批判した。
ユネスコは2021年7月、戦時徴用された朝鮮半島出身者に関する日本政府の説明が不十分だとする決議案を採択。世界遺産委員会は、「強い遺憾」を表明し、産業遺産情報センターの展示を念頭に改善を求めた。決議案では意思に反して連行され、過酷な状況での労働を強いられた多数の朝鮮人たちについて理解できるような措置を講じるよう求めた。これに、日本政府は「わが国は政府が約束した措置を含めて誠実に履行してきた。こうした立場を踏まえ、適切に対応したい」とした。世界遺産委員会の決議案には戦時中に軍艦島で過ごした元島民らから反発が上がり、決議案が出された当時、産経新聞は「「韓国側が朝鮮人に過酷な労働を強いたとして挙げている資料は、まやかしの資料ばかり」「到底受け入れられない。なぜユネスコは韓国の立場だけを忖度(そんたく)するのか」などと憤る元島民らの声を伝えている。
決議案を受け、日本政府は改善の進ちょく状況の報告を世界遺産委員会から求められ、昨年12月、報告書を提出した。報告書では、世界遺産委員会が決議案で「強い遺憾」を表明したことについて「真摯に受け止める」とした上で、出典が明らかになった資料や証言に基づき、引き続き軍艦島の歴史を次世代に継承していく考えを示した。
その後、センターは戦時徴用をめぐる展示の充実を図った。産経新聞によると、センターは端島炭鉱で1941年9月~45年8月に落盤事故などで44人が死亡したことを示す展示を追加した。このうち15人が朝鮮半島出身者とみられるという。また、戦時中の炭鉱での日々の作業内容や人数、衛生状態、落盤の有無などを記録した「保安月報」や「保安日誌」を動画で紹介している。このほか、世界遺産委員会が徴用労働者の待遇に関する資料も求めていたため、兵庫県内の造船所で働いていた朝鮮半島出身者の給与袋のレプリカも展示している。
こうした追加展示などを踏まえ、世界遺産委員会は今月14日、2021年の委員会決議から一転、日本側の取り組みを評価する決議を採択した。その上で、韓国など関係国と対話を継続するよう促した。また、調査や検証をさらに行い、今後の取り組みについて24年12月1日までに報告することも求めた。
決議を受け、韓国外交部(外務省に相当)は「日本が今回の決議に基づき、同遺産の全体の歴史を理解できる説明戦略の強化に向け自ら約束を履行し、その進展状況を24年12月1日までに提出するよう期待する」と発表した。その上で「わが政府もまた、同決議に従い日本及びユネスコ事務局との対話を続けていく予定」とした。
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