<W解説>「議員職喪失」の可能性も出てきた韓国・慰安婦団体前代表、最高裁で審理へ
<W解説>「議員職喪失」の可能性も出てきた韓国・慰安婦団体前代表、最高裁で審理へ
韓国の元慰安婦への寄付金を私的に流用したとして、業務上横領罪などに問われた元慰安婦支援団体の前代表で、国会議員のユン・ミヒャン(尹美香)被告に対し、ソウル高裁は今月20日、懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役5年)の控訴審判決を言い渡した。尹被告は判決を不服として上告する方針だが、最高裁で懲役刑が確定すれば、議員職を失う。韓国メディアは「『議員職喪失刑』尹美香、判決不服」(ニューシス)などといった見出しで、この日の公判の結果と、尹被告の上告の見通しを伝えた。

韓国の元慰安婦支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連、旧挺対協)の前理事長、尹被告をめぐっては、正義連の前身の挺対協の法人口座と個人口座で保管していた資金約1億ウォン(約1114万円)を私的に利用した業務上横領罪で2020年9月に在宅起訴された。そのほか、認知症の元慰安婦をだまして5000万ウォンを正義連に寄付させたとして準詐欺罪などにも問われている。

尹被告に資金不正疑惑が取り沙汰されるきっかけとなったのは、尹被告と長年にわたって活動を共にしてきた元慰安婦のイ・ヨンス(李容洙)氏が2020年5月に開いた記者会見だった。李氏は「(慰安婦のために)出した義援金(寄付金)はどこに使われているのか分からない。被害者に使ったことはない」「30年間にわたり騙されるだけ騙され、利用されるだけ利用された」などと訴えた。この告発をきっかけに尹被告らの活動に対する国民の不信感が広がった。

一方、尹被告はこれまでの裁判で起訴内容を全面否認。1審で「この30年間、活動家として恥じることなく生きてきたと考えている」、「あらゆる悪意あるメディアによる報道と根拠のない疑惑が続き、悪魔のような犯罪者に仕立て上げられた」などと主張してきた。

今月2月、ソウル西部地裁は罰金1500万ウォンの判決を言い渡した。また、詐欺罪など起訴内容の多くは無罪とした。

当時、尹被告は「検察が無理に起訴した部分のほとんどが無罪となった」と検察の捜査を批判。その上で「釈明が不十分だった一部の金額についても横領の事実はなかったと繰り返し強調してきており、控訴審で誠実に立証する」とし、その後、尹被告と検察の双方が控訴した。

尹被告は、疑惑が指摘される直前の2020年4月の総選挙で当選して国会議員となり、当時与党だった「共に民主党」(現・野党)所属議員として活動してきた。しかし、不動産の取引や保有をめぐって違法行為の疑いが浮上し、2021年6月、党から除名処分を受け、以降、無所属議員として活動している。

そして今月20日、二審の判決公判が開かれ、ソウル高裁は一審より重い刑となる懲役1年6月、執行猶予3年の判決を言い渡した。控訴審では横領の認定額が一審の1718万ウォンから8000万ウォンに増えたほか、人件費の虚偽記載による国の補助金6500万ウォンの詐取なども有罪と判断されたことで量刑が重くなった。聯合ニュースによると、高裁は「慰安婦支援などのための寄付金の管理を徹底する必要があったにも関わらず、期待を裏切って横領し、挺対協を支援する人々に被害を与えた。直接の弁償や被害の回復も行われなかった」と指摘。一方、「30年にわたり人的・物的資源が不足する中で活動を続けたこと、複数の団体や慰安婦の家族らが善処を求めたことを考慮した」と量刑理由を説明した。

尹被告は判決後に報道陣の取材に応じ、「裁判で私の無罪を十分に立証するため最善を尽くしたが、受け入れられなかった。上告して無罪を立証する。慰安婦問題の解決に向けた30年間の運動が貶(おとし)められることのないよう努める」と語った。

前述のように、国会法と公職選挙法により、国会議員は禁固以上の刑(執行猶予含む)が確定すれば議員職を失う。韓国メディアの多くは尹被告について「議員職喪失の危機」などと報じている一方、現在1期目の尹被告の任期は来年4月までのため、毎日経済は「任期はほぼ満了できる見通しだ」と伝えた。

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