韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が大法院長(最高裁判所長官)候補に指名したイ・ギュニョン(李均龍)氏
韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が大法院長(最高裁判所長官)候補に指名したイ・ギュニョン(李均龍)氏
韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が大法院長(最高裁判所長官)候補に指名したイ・ギュニョン(李均龍)氏の任命同意案が国会で承認されるか微妙な情勢となっている。過半数の議席を占める最大野党「共に民主党」が難色を示しているためだ。李氏をめぐっては、政権に批判的なメディアから「大統領の友人」などといった指摘が出ている。李氏は大学で尹大統領の1年後輩。韓国紙ハンギョレは「大統領と長官候補者が親しい間柄であるゆえに司法府と政府間の最低限の抑制と均衡が崩れるのではとの懸念の声も上がっている」と伝えている。

李氏は南東部キョンサンナムド(慶尚南道)出身の61歳。ソウル大学法学部卒業後、司法試験に合格し、1990年に判事となった。その後、大法院の裁判研究官やソウル南部地方裁判所長、中部のテジョン(大田)高等裁判所長、ソウル高等裁判所の部長判事などを歴任した。また、李氏は慶應義塾大学で研修した経験があるほか、日本の法曹関係者との交流も多く、「知日派」としても知られている。

また、韓国メディアのニュース1によると、李氏はこれまで、社会的弱者や少数派を保護し、人権を擁護する判決を多数下してきたとういう。ソウル高裁部長判事時代の2016年には、トゥレット症候群(自分の意思とは関係なく、体のどこかが突然繰り返し動いてしまう「チック」と呼ばれる症状が複雑に現れる病気)が障害者福祉法施行令に規定された障害類型ではないという理由で、地方自治体が障害者登録を拒否したのは違法と判断。「障害者福祉法施行令が障害者の範囲を制限的・限定的に定め、国家から保護されないようにしたことは憲法上平等の原則に違反する」とした。また、2019年には、農業従事者が警察に放水銃で撃たれ死亡した事件で、起訴された元ソウル地方警察庁長を無罪とした1審判決を覆し、罰金1000万ウォン(約110万円)の逆転有罪判決を下した。判決は「被告は指揮権を使って過剰放水が放置される実態を確認し、必要な措置を取らなければならならなかった」と指摘した。この判決は最高裁で確定した。

尹大統領は先月21日、日本の最高裁判所長官にあたる大法院長の候補に、李氏を指名した。李氏が大法院長に任命されれば、昨年5月の尹政権発足後に任命された4人目の大法院の裁判官となる。また、韓国の公共放送、KBSによると、李氏が就任した場合、大法院の14人の裁判官のうち、裁判を担当しない1人を除く13人は中道・保守派が8人、革新派が5人という構図になる。大法院の任期は6年で、各裁判所の指揮・監督権や裁判官の任命権を持つ。

現政権に批判的な韓国紙のハンギョレは、「尹大統領が李ソ氏を大法院長候補に選んだのは、『司法府の保守化』を率いる最適な人物と評価したためとみられる」と指摘。その上で「(李氏が)最高裁長官になれば、保守的なスタンスを、最高裁判事の招請はもちろん司法行政にも積極的に反映するものと予想される」と伝えた。尹大統領と李氏はソウル大法学部の先輩・後輩の間柄で、同紙は「尹大統領と李氏が親しいのは広く知られている事実だ」とし、「昨年から、最高裁判事候補、最高裁長官候補が実力よりも大統領との親交で指名されている」と指摘する、ある高裁判事の話を伝えた。さらに同紙は「李氏がソウル南部地裁所長、大田高裁長官の経験以外に司法行政や最高裁判事の経歴がない点も大法院長になるにあたって弱点となる」とも指摘した。

今月19、20日に国会人事聴聞特別委員会が開かれ、李氏に対する資質と道徳性の検証が行われた。しかし、韓国紙の東亜日報は李氏の大法院長人事案が国会で承認されるか微妙な情勢だと伝えた。21日に李氏に対する人事聴聞会経過報告書が採択されたが、報告書には与党から「適格」との意見が併記された一方、野党は「不適格」とした。野党側は李氏について、裁判官としての能力や資質には問題ないとする一方、「大統領との親交で大法院長候補に指名された」と指摘し、「不適格」とする考えを示した。

李氏に任命同意案は、早ければ本日25日の国会本会議で採決が行われる見通し。しかし、同意案が本会議を通過するには、在籍議員の過半数が出席した上で、出席議員の過半数が賛成しなければならない。国会で過半数の議席を占める最大野党「共に民主党」は、李氏が大法院長になることに難色を示していることから、同意案は否決される可能性が高まっている。大法院長の任命同意案が否決されれば、35年ぶりのこととなる。東亜日報は「大法院長の空白事態が現実になる可能性がある」と伝えている。

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