<W解説>5年ぶりに国際スポーツの祭典に登場した北朝鮮=杭州アジア大会出場も、国旗掲揚めぐり物議
<W解説>5年ぶりに国際スポーツの祭典に登場した北朝鮮=杭州アジア大会出場も、国旗掲揚めぐり物議
第19回アジア大会が今月23日、中国・杭州で開幕し、北朝鮮が総合的な国際スポーツの祭典としては5年ぶりに出場した。北朝鮮は今大会に190人超の選手を登録。サッカーや卓球などの競技に出場する。選手団は23日に行われた開会式に登場したが、その際、国際大会で掲揚が禁止されている北朝鮮の国旗を手に入場行進したことから、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)が問題視している。WADAは大会主催者側に責任を問う構えだ。

北朝鮮は2018年にインドネシアで開かれたアジア大会以来の総合的国際スポーツの祭典への復帰となった。2021年の東京五輪には、新型コロナウイルスの流行などを理由に一方的に不参加を決め、国際オリンピック委員会(IOC)から2022年末まで国際大会への出場資格停止処分を受けていた。

コロナ禍では徹底した国境封鎖措置を取ってきた北朝鮮だが、日本や韓国など各国が日常を取り戻すための政策を推し進めるようになると、それに歩調を合わせるかのように国境の開放や人的往来を再開させた。5月には杭州アジア大会に、北朝鮮が選手登録を進めていることが報じられていた。

開会式に先立ち、19日には男子サッカーの試合が行われ、グループF組の北朝鮮は台湾と対戦。2-0で勝利した。試合にはかつて国際スポーツ大会で統率のとれた応援で注目を集めた北朝鮮の女性応援団が登場した。韓国紙の朝鮮日報によると、会場には薄いピンクのTシャツと帽子を被った女性応援団4人の姿があり、選手たちに声援を送った。同紙は「北朝鮮応援団は北朝鮮代表が人共旗(北朝鮮の国旗)を先頭に登場する際には神妙な面持ちでピッチを見つめた。直後に試合が始まると、最初から最後までうちわを振りながら大きな声で選手たちに声援を送った。前半7分に北朝鮮のリ・チョグクが先制点を決めた際に応援団は涙を流し、キム・ククチンが決勝ゴールを決めた時には『キム・ククチン!』と叫び続けた。北朝鮮のゴールキーパーがファインセーブを決めると『よくやった、朝鮮の門番、かっこいい』と声を上げた」と会場での応援団の様子を伝えた。応援団は21日のサッカー男子キルギス戦にも姿を見せ、同紙によると、この試合では応援団の人数が30人以上に増えていたという。また、NHKが関係者の話として伝えたところによると、応援団は本国からの派遣ではなく、中国にある北朝鮮レストランなどで働く従業員たちだという。

また、北朝鮮選手団は22日、ブルネイ、カンボジア、パレスチナ、タイ、台湾の選手団と共に入村式を行った。北朝鮮の選手ら約20人は、白いジャケットに青いズボン、スカート姿で国旗を振りながら入場した。韓国の聯合ニュースによると、選手団代表は体育省副大臣と推定されるオ・グァンヒョク氏が務めたという。入村式を終えた北朝鮮選手団は無言で宿泊施設に戻ったというが、聯合によると、コーチとみられる男性は今大会の目標を問われ、「優勝を勝ち取ること。良い成果を期待している」と語った。聯合は「北朝鮮の戦力からみて、現実的な目標というよりは5年ぶりに参加した国際大会での善戦を誓ったものと受け止められる」と伝えた。

23日には開会式が行われ、北朝鮮選手団は旗手を務めたボクシングのパン・チョルミン、射撃のパク・ミョンウォンを先頭に、小旗を振りながら入場行進した。前回2018年のジャカルタ・アジア大会では北朝鮮は韓国と合同チームを組んだが、現在、南北は関係が悪化しており、今大会に向けては、南北チーム間の協力を模索する動きさえ見られなかった。

開会式に合わせ、北朝鮮からは、オリンピック委員会トップのキム・イルグク(金日国)体育相が杭州入りした。開会式にも出席したとみられている。北朝鮮は、過去には五輪やアジア大会を外交の舞台として活用しており、今回も中国との関係強化を図る見通しだ。

一方、大会で北朝鮮の国旗が掲揚されていることが物議を醸している。世界アンチ・ドーピング機構(WADA)は北朝鮮に対し、国際大会での国旗掲揚を禁じる制裁を科しているが、大会では選手村や、22日に行われた卓球男子団体の試合などで掲揚されているのが確認されている。開会式でも旗手が大きな国旗を手に入場した。WADAは開催国の中国に対し、責任を問う方針だが、韓国紙の中央日報は「実際に拘束力がある措置が可能かどうかは未知数だ」と伝えた。
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