<W解説>逮捕状請求が棄却された韓国最大野党代表、身柄拘束回避で今後は?
<W解説>逮捕状請求が棄却された韓国最大野党代表、身柄拘束回避で今後は?
韓国最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表の北朝鮮への不正送金など複数の疑惑をめぐり、ソウル中央地裁は今月27日、李氏への逮捕状を棄却した。ソウル拘置所で令状審査の結果を待っていた李氏は釈放され、「『人権の最後のとりで』という事実を明らかに証明してくれた司法府に深く感謝申し上げる」と述べた。韓国の聯合ニュースは「李氏は政治基盤を回復し、2年にわたり全方位で圧力をかけてきた検察に反撃する機会を得たことになる」と伝えた。

李氏をめぐっては、ソウル近郊のキョンギド(京畿道)ソンナム(城南)市長時代の都市開発事業で民間業者に便宜を図り、公社に損害を与えた背任や、京畿道知事だった2019~20年、副知事と共謀し、大手衣料企業の元会長に北朝鮮へ計800万ドル(約11億8000万円)を不正に送金させた外国為替取引法違反など複数の容疑がかけられ、検察が今月18日に逮捕状を請求していた。

現職議員は国会の同意なしに逮捕できないため、逮捕同意案が国会に提出され、21日に採決が行われた。その結果、出席した国会議員295人中149人が賛成票を投じ、過半数を1票上回り、可決。国会で過半数議席を占める「共に民主党」議員から造反者が多く出る結果となった。造反者は30人前後に上ったものとみられている。

李氏は26日、逮捕状を出すかどうかを決めるソウル中央地裁での令状審査に出席した。野党第1党の代表が裁判所の令状審査を受けるのは初めてのことだった。9時間を超える審問と7時間の熟考の末、ソウル中央地裁は27日未明、李氏に対する逮捕状請求を棄却した。地裁は容疑について、「(本人の)認識や共謀の有無、関与の程度などに関して争いの余地がある」と指摘。李氏は党代表として「公的監視と批判の対象」であることや、今年3月にも背任や収賄の疑いで在宅起訴され裁判が続いていることから、「証拠隠滅の恐れがあるとみることは難しい」と結論付けた。また、聯合ニュースによると、担当判事は27日、「被疑者の証拠隠滅の憂慮の度合いなどを総合すると、不拘束審査の原則を排除するほどの逮捕の理由と必要性があるとはみなし難い」との判断を示したという。

李氏は棄却決定後、党幹部や多くの支持者らが集まる中、待機していたソウル拘置所から姿を現し、「大韓民国の憲政秩序を固く守り、賢明な判断をした司法府に深く感謝する」などと述べた。拘置所前は約150人の支持者が集まっており、李氏に対する逮捕状棄却のニュースが伝わると、「李在明」と連呼した。

一方、聯合ニュースによると、ソウル中央地検の関係者は27日、「党代表であるため証拠隠滅の恐れがないとしたのは司法に政治的な考慮があったのではないかという懸念がある」と批判。「裁判所の決定は検察と相当な見解の相違があり、受け入れがたく、深い遺憾の意を表す」と述べた。その上で「拘束捜査は法が定める一つの方法であり、まだ捜査が終了したわけではないため、容疑を立証するために最善を尽くす」と話した。検察は秋夕(チュソク、中秋節)の連休(28日~10月3日)明けに、李氏を在宅起訴するものとみられる。

李氏の今後について聯合ニュースは「党内のリーダーシップの回復に努めるとともに、検察に対し『政治報復のために検察権を乱用した』として大々的な反撃に乗り出すと見込まれる」と予想した。また、韓国紙のハンギョレは「今回の令状棄却は、崖っぷちまで追い込まれていた李代表に起死回生のチャンスを与えた」と指摘。自身の逮捕同意案の可決で党内に溝ができたが「分裂した党を整え、強力な対与党闘争に乗り出すものとみられる」と予測した。「共に民主党」は26日、国会運営を取り仕切る院内代表を選ぶ選挙を行い、李代表寄りのホン・イクピョ議員を選出した。韓国の公共放送KBSは「これにより、李代表中心の体制がより強化されるものとみられる」と伝えた。

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