北朝鮮は新型コロナの世界的大流行を受けて2020年1月末に早々と国境を封鎖。ウイルスや感染者の流入を徹底的に阻止しようとした。世界各国に感染が広がる中、真偽は不明なものの北朝鮮は長らく国内に感染者は一人もいないと主張し続けた。しかし、昨年5月、感染者の確認を初めて発表した。北朝鮮の国営、朝鮮中央通信は当時、「2020年2月から2年3か月間にわたって強固に守ってきた非常防疫戦線に穴が開く国家最重大の非常事件が起きた」と報道。新型コロナの変異株オミクロン株の感染者が出たと伝えた。それまで、「感染者ゼロ」を主張し続けてきただけに、この発表は世界に衝撃を与えた。
昨年1月、北朝鮮は国境封鎖措置を一旦は解除したものの、前述のように感染者が初めて確認されたことを受けて再び封鎖。物流が滞り、頼みの綱である備蓄米も一気に減る事態となった。これにより、住民たちは飢えに苦しみ餓死者が相次いでいるとも伝えられた。
昨年8月、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記はコロナの防疫対策をめぐって「勝利」を宣言。全国非常防疫総括会議での演説で「流入した新型コロナウイルスを撲滅し、人民の生命健康を守るための最大非常防疫戦において勝利を手にしたと宣布する」などと述べた。マスク着用義務などの各種規制も解除された。
この宣言を受け、日常を取り戻すかと思われたが、早くも1か月後にはマスクの着用についてインフルエンザなど感染症予防のためとして再び公共の場での着用を命じた。今年1月には「ゼロコロナ」政策が終わって感染者が激増した中国からの流入を恐れ、国境地帯で警戒態勢を強化した。
徹底した国境管理で、人・物の出入りを厳しく制限してきた北朝鮮だが、今年7月の朝鮮戦争の休戦協定の締結から70年の記念行事にはロシアのショイグ国防相や中国共産党の李鴻忠(りこうちゅう)政治局員らを招くなど、徐々に人の往来を再開させるようになった。8月には、北朝鮮国営の高麗航空がピョンヤン(平壌)と北京の間、ロシア極東のウラジオストクの間で運航を再開させた。北朝鮮が国際航空便を運航するのは約3年半ぶりのことだった。旅客機には国境封鎖で中国やロシア国内に足止めされていた北朝鮮の人民が、帰国するために続々と搭乗した。
さらに9月23日に中国・杭州で開幕したアジア大会に、北朝鮮は選手団を派遣。総合的な国際スポーツの祭典としては、2018年にインドネシアで開かれたアジア大会以来5年ぶりの参加となった。北朝鮮は2021年の東京五輪には、新型コロナウイルスの流行などを理由に一方的に不参加を決め、国際オリンピック委員会(IOC)から2022年末まで国際大会への出場資格停止処分を受けていた。
国境を越えた人の往来を段階的に再開してきた北朝鮮だが、中国国営中央テレビは、北朝鮮が9月25日から外国人の入国を許可したと伝えた。入国後2日間の隔離措置を取ることを条件としているという。8月に国外からの自国民の帰国を認めたのに続き、今後は外国人観光客やビジネスマンの入国を正常化することで経済活性化につなげたい狙いがあるものとみられる。中国などから新規投資を呼び込みたい考えもありそうだ。9月21日には、平壌駐在の中国の大使が北朝鮮の観光当局の幹部と会談。中朝間の人的往来の早期正常化を期待するとともに、観光交流や協力を強める考えを示していた。新型コロナ禍前の2018年に北朝鮮を訪れた外国人観光客は約20万人で、9割以上が中国人だった。また、北朝鮮は、キム・ジョンウン(金正恩)総書記が今月訪問したロシアとも経済協力を拡大する方針を示している。
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