<W解説>日朝接触報道、7月の韓国紙に続き、今度は日本メディアが伝える
<W解説>日朝接触報道、7月の韓国紙に続き、今度は日本メディアが伝える
北朝鮮による拉致問題の解決に向け、日本政府関係者が今春に2回、北朝鮮の朝鮮労働党関係者と接触していたと、朝日新聞が先月29日に報じた。松野博一官房長官は同日の記者会見で、この報道について「事柄の性質上、答えは控える」と述べた。一方、産経新聞は日朝による接触について韓国紙が今年7月に報じた際には、松野氏は「そのような事実はない」と否定していたとし、答弁に変化が見られることを指摘した。

北朝鮮による拉致問題をめぐっては、これまでに5人の被害者が帰国したが、安否がわからない被害者は日本政府が認定しているだけでも12人に上る。被害者家族は北朝鮮が拉致した日本人全員が帰国し、1日も早いこの問題の解決を訴えているが、北朝鮮は拉致問題について「解決済み」と主張。日本政府は打開策が見出せずにいる。

今年5月、岸田文雄首相は拉致被害者の帰国を求める集会で、日朝首脳会談の実現に向け「私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい」と表明した。「直轄」との表現を用いるのは初めてのことで、当時、問題解決のため、あらゆる交渉ラインを通じて首相主導で取り組む意思が示されたものと解釈された。

日朝首脳会談の開催に意欲を見せた岸田首相の表明から2日後、北朝鮮は「もし日本が過去にとらわれず、関係改善の活路を模索するのなら両国が会えない理由はない」とする、北朝鮮外務省のパク・サンギル次官の談話を発表。「日本は行動で問題解決の意思を示すべきだ」などと対話に前向きとも取れる姿勢も示した。一方でパク次官は「解決済みの拉致問題を提起しようとしている」と主張。「先の政権のやり方に倣い、実現不可能な欲望を解決しようとするのなら誤算であり、時間の浪費になる」とも主張した。

翌6月、北朝鮮の国営、朝鮮中央通信は日本研究所の研究員の談話を伝えた。拉致問題について「日本が実現不可能な問題を前面に掲げて旧態依然として国際舞台に持ち出している」と指摘。その上で「『前提条件のない日朝首脳会談』を希望すると機会あるたびに言及している日本当局者の立場を自ら否定するのと同じだ」と主張した。日本研究所は北朝鮮外務省の傘下にあるとみられ、北朝鮮は日本を批判する際、しばしばこの日本研究所の研究員名義で談話を発表している。

こうした中、今年7月、韓国紙の東亜日報が日本と北朝鮮の実務者が6月に複数回、中国やシンガポールなどで水面下の接触を行ったと報じた。同紙は複数の情報筋の話として、日本人拉致問題や高官級協議の開催などをめぐって議論したが、見解の差が埋まらなかったと伝えた。この報道を受けて松野官房長官は当時、「そのような事実はない」と否定した。

そして先月29日、朝日新聞は「日本政府関係者が今年3月と5月の2回、東南アジアで北朝鮮の朝鮮労働党関係者と秘密接触していた、と複数の日朝関係筋が証言した」と伝えた。記事によると、岸田文雄首相は北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記との首脳会談に向けた環境整備が進められるとみて、今秋にも平壌に政府高官を派遣することを一時検討していたという。しかし、接触後は具体的な進展がなく交渉は停滞しているものとみられる。
この報道について岸田首相は同日、記者団に対し「事柄の性質上、コメントすることは控える」と述べた。

前述のように、岸田首相は今年5月、日朝首脳会談の実現に向け「私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい」と表明しており、共同通信は「発言のタイミングは日朝接触の時期と重なる」と指摘した。

先月17日、初の日朝首脳会談が行われてから21年を迎えた。拉致被害者の家族たちは1日も早い解決を改めて訴え、そのための早期の日朝首脳会談実施を求めた。

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