日韓共同宣言は1998年10月8日に当時の金大統領と小渕首相が共同署名した文書。過去の両国の関係を総括し、緊密な友好協力関係を高い次元で発展させて、未来志向的な関係を構築することで認識を共有。新たな日韓パートナーシップを構築するとの共通の決意を宣言した。同宣言はその後の日韓交流の礎となり、経済や文化、人的交流は活性化した。
韓国では宣言を機に日本の大衆文化の解禁が始まり、1999年には日本映画「Love Letter(ラブレター)」(岩井俊二監督)が大ヒット。主演の女優・中山美穂さんが叫んだセリフ「お元気ですか?」は当時、韓国人の間で流行った日本語だ。
日韓共同宣言は、韓国では「金大中・小渕共同宣言」と表現される。昨年5月の大統領就任以来、日韓関係改善に取り組んできたユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は、大統領選候補者の時から幾度となく同宣言に言及。候補者時には「共同宣言には韓日関係を発展的な方向に導けるほぼすべての原則が盛り込まれている。この精神と趣旨を継承し、韓日関係を発展させれば、両国の未来は明るいはずだ」と述べ、宣言の精神を継承しながら日韓関係の改善に意欲を見せていた。
発言通り、尹大統領は就任以来、日韓関係の改善に精力的に取り組み、日韓最大の懸案だった元徴用工問題は今年3月、韓国政府が「解決策」を発表した。直後に開かれた日韓首脳会談で、両国首脳は関係正常化に合意。会談後の記者会見で、尹大統領は「今年は『金大中・小渕共同宣言』から25年になる年」と、同宣言に改めて言及しながら「宣言の精神を発展的に継承して両国の不幸な歴史を克服し、韓日協力の新たな時代を開く一歩となった」と会談の成果を強調した。
その後、日韓関係は劇的に改善し、現在、政界のみならず、経済界、そして民間同士の交流も活発化している。
先月30日と今月1日の両日には、東京都内で日韓両国の文化交流を図る「日韓交流おまつり」が開かれた。新型コロナ禍ではオンラインでの開催を余儀なくされたが、4年ぶりに対面での実施となった。
日韓交流おまつりは、両国の企業や団体などでつくる実行委員会の主催で、日韓国交正常化40周年を迎えた2005年に始まり、毎年開かれている。「日韓共同宣言」の精神を形にしようとの願いが込められており、日韓の両政府が後援している。2005年からソウルで開催されてきたが、2009年からはこの催しを日韓で共に作り上げようとの思いから、ソウルと東京の双方で開かれるイベントとなった。K-POPやJ-POPのほか互いの伝統芸能、グルメなどが楽しめるイベントとして定着している。元徴用工問題や日本政府による対韓輸出規制強化を受けて日韓関係が一段と悪化し始めた2019年、日韓の交流事業が相次いで中止や延期となる中でも開催にこぎつけ、途切れさせることなく翌年以降につないできたイベントでもある。
冷え込んでいた両国の関係が改善の軌道に乗る中、尹徳敏・駐日大使は先月27日、都内で講演し、来年に首脳間で新たな日韓共同宣言を発表すべきとの認識を示した。尹大使は「この機会を逃さない。両国関係が改善している。新たな両国の未来に向けての宣言は必要ではないか」と述べた。その上で、新たな宣言について「未来志向で互いの国民に恵みが与えられるようなことを盛り込む必要がある」と語った。
ただ、新宣言を取りまとめるとなると懸念もぬぐえない。歴史認識の取り扱いをめぐって対立が再燃する可能性もあるからだ。韓国では来年4月に総選挙を控えている。新たな宣言のタイミングについて尹大使は「互いに政治的に安定した来年だと思う」と述べたが、選挙結果によっては、野党を中心に新宣言の発出そのものに難色を示したり、歴史認識への言及を強く求める声が強まることも予想される。
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