<W解説>ノーベル賞受賞者輩出を待ち望む韓国、必要なのは「執着」ではなく地道な「努力」と国の「継続支援」
<W解説>ノーベル賞受賞者輩出を待ち望む韓国、必要なのは「執着」ではなく地道な「努力」と国の「継続支援」
今年のノーベル賞の発表は、今月4日までに自然科学系は全て終了した。今年も韓国人の受賞者は出なかった。韓国はこれまでノーベル賞とは縁遠く、受賞者は2000年に平和賞を受賞したキム・デジュン(金大中)元大統領のみ。自然科学系の受賞者は1人もいない。ノーベル賞の発表の時期が近づくと毎年、悲願の受賞に期待が高まるが、最近は「ノーベル賞煩(わずら)いで忙しくなる」(韓国紙・中央日報)などと表現されるように、連日ノーベル賞の各賞が発表される期間は、韓国にとって科学技術分野の世界との差を改めて痛感する、いささか憂鬱(ゆううつ)な期間ともなっている印象だ。

今年も2日の生理学・医学賞を皮切りに、3日に物理学賞、4日に化学賞と、自然科学系の賞の受賞者の発表が続いた。

韓国紙の中央日報は3日付の社説で「ノーベル賞予測で有名な学術分析機関クラリベイト・アナリティクスが挙げた候補の中に韓国人科学者は1人もいない」とした上で、「既に25人の(自然科学系の)ノーベル賞受賞を輩出し、毎年有力候補が挙がる日本と比較せざるを得ない」とその差を指摘した。英国のクラリベイトは、毎年9月にノーベル賞の有力候補とされる引用栄誉賞の受賞者を発表している。同賞は世界の研究者の学術論文の被引用数の多さや「研究への貢献度」、「ほかの賞の受賞歴」、「過去のノーベル賞から予想される注目領域」などの要素を勘案し、医学・生理学、物理学、化学、経済学の4分野で評価。これまで何人も引用栄誉賞の受賞者の中から実際にノーベル賞を受賞している。

韓国のノーベル賞への「執着」は、海外からは異様に映っているようだ。国立ハンバッ大学のオ・チョルウ講師(科学技術学)は韓国紙・ハンギョレへの寄稿で「受賞だけが目標になってしまうと異様に執着していると思われてしまう。韓国の大学の外国人教授が、学内に掲げられている『ノーベル賞を受賞する方法』と題する討論会のバナーを見て『韓国に来るまで、このようなテーマの討論会は聞いたことがなかった』と語っていたことが思い出される」と記した。また、ノーベル賞を長く研究してきた韓国のポハン(浦項)工業大学のイム・ギョンスン名誉教授は韓国紙の中央日報の取材に「世界中どこへ行っても我々ほどノーベル賞を渇望している国はない」と話した。それだけ韓国にとってノーベル賞受賞者の輩出は悲願であることがうかがえる。

韓国は受賞者輩出を現実のものとするために、国として基礎科学に本格的に投資を続けており、2011年には世界的水準の基礎科学研究を行うため、「基礎科学研究院(IBS)」を設立した。研究開発に積極的に取り組んでおり、2023年の韓国の研究開発予算は30兆ウォン(約3兆3000億円)を突破した。研究開発費が国内総生産(GDP)に占める割合は4.96%で世界第2位だ。

しかし、韓国は日本などと比べると、基礎科学に本格的に投資するようになってからそれほど経っていない。こうした取り組みがすぐにノーベル賞受賞につながるものではないことは皆理解している。中央日報も「今日、偉大な科学的発見をしたからと言ってすぐに受賞できるケースは珍しい」とし、「50代半ばに研究結果が学会の注目を浴び、50代後半に差し掛かって当該分野の最高権威者になり、ノーベル賞を受賞する場合が大半だ」と解説した。前出のハンバッ大学のオ講師も「ノーベル賞受賞までのタイムラグは長期化している」と指摘した。

息の長い地道な研究が必要で、そのためには国による継続的な支援が欠かせない。これまで、手厚い研究費を投じてきた韓国だが、政府が発表した来年予算案では研究開発費は今年に比べ16.6%も削減されている。中央日報は社説で「水準の高い研究が引き続き行われ、国家の体質がファーストムーバー(先導国家)型に変わってこそ、ノーベル賞に近づくことができる」と訴えた。

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