今月20日の午後11時30分、ソウル市ヨンサン(龍山)区イテウォン(梨泰院)のあるクラブ。2階の踊り場から1階を見下ろしていた20代の女性Aさんはこのように叫んだ。通路の幅はわずか2人から3人が通れる程度に過ぎず、いつ転落事故が起きてもおかしくなさそうだった。
梨泰院駅近くの傾斜した路地の片隅には、近くの商店から出たゴミや物が置かれていた。「路上にむやみにものを積むと区役所から指導を受ける」という内容の警告文も貼られていたが、夜が深まるとタバコを吸う人たちが押し寄せて混雑した。
梨泰院で起こった雑踏事故から1年。記者が19日から20日に見回て回った梨泰院一帯には依然として危険要素が潜んでいる様子だった。いつのまにか事故から1年近くが経ち、週末の夜には以前のような活気に満ちあふれているが、地元の市民たちは1年前の惨事を思い出し、混雑する街の姿を心配そうに眺めている。
梨泰院駅の1番出口前、昨年雑踏事故が発生したハミルトンホテル横の狭い路地は「記憶と安全の道」を造成するために一部が壁で覆われていた。壁が設置された場所では、張り紙を見回したり、メッセージを書き込む市民が目についた。
雑踏事故が起こってから一時近隣の店は営業を自粛していたが、今では夜になると明るくネオンが灯り、大音量で音楽をかけていた。一部の店では道の外で客引きまで行っていた。
クラブが多数密集している通りは依然として事故の危険性が高いように見えた。深夜12時近くになると人でいっぱいになり、歩きにくくなる瞬間もあった。梨泰院のクラブによく訪れるという20代の女性Aさんは「以前は肩が触れ合って通り過ぎることに対する危険性について知らなかったが、昨年の事故が起こってからは危険だと感じるようになった」と話し、「左側通行をしっかり守れるよう、道路に区分線などを引いたらどうかと思う」と語った。
梨泰院で話を聞いた人たちは「不安はそのまま残っている」と口をそろえた。居酒屋の店員の20代のBさんは「階段を上り下りするお客さんの中に酔った人がいたら、念のため最後まで後ろから見守るようにしている」と話した。20代の女性Cさんは、「ここは人が多いことをある程度覚悟して来る場所だが、混雑度が高い時には人数制限を行うなどしてほしい」と語り、「体格の小さい女性は、大柄な外国人とぶつかっただけでもけがをする場合がある」と話した。
照明が暗いクラブなどでは、店内でも危険な状況が多く存在していることが分かった。
梨泰院駅近くの地下にあるクラブでは、入口から降りる階段が狭くて「人が密集したらどうするのか」と心配になった。クラブの内部は前がよく見えないほど暗かった。人々が集まって踊るスペースの横にはテーブル席が用意されていたが、テーブル席の横に段差があり、しばしばつまづいて倒れそうになる人もいた。
踊るスペースにも手すりのような構造物がなく、一度に多くの人が密集した場合、抜け出す通路が確保されていないように見えた。トイレ側に設けられた非常口の表示は小さく、誘導灯は設置されていなかった。客を案内するスタッフも腕につけた蛍光ブレスレットや携帯電話の照明に頼っていた。
屋外でも状況は同じだった。地下ほど危険性が高くなくても、手すりなどは危険に見えた。一部の人々は酔って手すりを揺らしていた。また、屋内で花火をして火災が発生する危険性もあった。かつてクラブで仕事をしていたことがある人は「酒に酔って階段で倒れたりするなどの事故は以前から頻繁に起きていた」と話し、「その時は雑踏事故が起こる前だったから人々に警戒心がなかったが、今では対策が必要ではないかと思う」と語った。
一方で、事故現場を訪れる人々も多く見られた。日本人の西宮さん(23)は「3年ぶりに韓国に来たが、ここでそんな凄惨な事故があったなんて信じられない」と話し、「同年代の若者たちを慰めたい」と語った。カナダから韓国を訪れたDさん(41)も「友人の知人が残念ながらここで命を落とした」と話し、「このような悲劇は二度と起きてはならない」と語りながら「平和」と書かれたメッセージを残した。
Copyrights(C) Edaily wowkorea.jp 107