昨年5月、日韓関係改善に意欲を見せる尹大統領が当選し、発足した尹政権は日韓最大の懸案である元徴用工訴訟問題の解決に力を注いだ。今年3月、韓国政府はこの問題の「解決策」を発表。その内容は、元徴用工を支援する韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が、元徴用工らへの賠償を命じられた被告の日本製鉄や三菱重工業に代わって遅延利子を含む賠償金相当額を原告らに支給するというものだった。韓国政府が解決策を発表した際、尹大統領は解決策について「政府が被害者の立場を尊重しながら、韓日両国の共同利益と未来発展に符合する方法を模索した結果だ」と強調した。
財団はこれまでに、勝訴した15人のうち、生存している原告の1人と10人の遺族への支給を完了した。
韓国政府が「解決策」を示して以降、日韓関係は改善に向け本格的に動き出し、長く途絶えていた日韓首脳同士の相互訪問「シャトル外交」も再開した。9月に行われた日韓首脳会談で岸田首相と尹大統領は、首脳会談の回数が半年間で6回に上っていることに触れ、両国が緊密な連携を継続していることを歓迎した。経済分野でも改善が進み、日本は7月、韓国を輸出優遇対象国に再指定。韓国向けの輸出管理をめぐって日本政府が2019年に厳格化した措置は4年ぶりに全て解除された。
両国民の相互往来、交流も活発となっている。日本政府観光局が先月発表した9月の訪日外国人客数218万4300人中、韓国人客は57万400人で、国・地域別で最も多かった。コロナ禍前の2019年同月比では2.8倍増となった。また、韓国観光公社が先月30日に発表した統計によると、同月に韓国を訪問した外国人観光客約109万8000人中、日本人客は約25万人で、中国(約26万4000人)に次ぎ2番目に多かった。
日本のNPO法人「言論NPO」と韓国のシンクタンク「東アジア研究院」が今年8~9月にかけ、日韓双方で約1000人ずつを対象に行った調査では、現在の両国の関係について「良い」と答えた人の割合は、日韓双方で調査の開始以来、最も高くなった。両団体は2013年から共同で世論調査を行っている。先月12日に公表された調査結果によると、現在の日韓関係について「非常に良い」または「どちらかと言えば良い」と答えた人は、日本側で29%、韓国側で12.7%となった。両団体では、首脳外交をはじめ日韓関係の改善の流れが加速する一方で、元徴用工訴訟問題への対応などが調査結果に影響を与えたと分析している。
こうした中、米国のジョン・F・ケネディ図書館財団は先月29日(現地時間)、岸田首相と尹大統領に「勇気ある人物賞」の特別国際賞を贈った。同賞は1989年に創設され、勇気あるリーダーシップを発揮した政治家らを毎年表彰している。財団は、日韓関係を改善させた両首脳を「過去にとらわれず、希望に満ちた未来を選んだ」と評価した。
29日、米ボストンのJFK財団図書館兼博物館で授賞式が開かれた。尹大統領はリモートで受賞の感想を伝え、「ケネディ大統領のニューフロンティア精神を象徴する『勇気ある人物賞』を受賞することになり、個人的に光栄に思う。韓米日3か国の強力な連帯を通じて、世界の自由と平和、そして繁栄に寄与していくという重い責任を感じる」と述べた。また、岸田首相もリモートで「尹大統領との友情と信頼関係を基に、日韓関係の新たな時代を開いていけるよう努力していく」と語った。
一方、依然として日韓には解決すべき問題が残されている。元徴用工問題に関しても、一部の原告や遺族が賠償相当分の支給金の受け取りを拒否。韓国政府が示した解決策の完全な履行は先が見通せない。慰安婦問題に関しては「韓国国内の問題」とする立場の日本政府との協議も進んでいない。
前出の世論調査で、今後の日韓関係について「良くなっていく」または「どちらかといえば良くなっていく」と答えた人は、日本側では38.5%と昨年より8.6ポイント高くなった一方、韓国側では28.8%と昨年より1.2ポイント低くなった。
今回、「勇気ある人物賞」に輝いた、岸田、尹両首脳が、残された両国の課題と向き合いながら、今後、関係をどのように成熟させていくのか注目される。
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