金浦市はソウル市の北西に位置し、人口は約40万人。ハンガン(漢江)西岸に沿って北西から南東へ30キロの細長い市域を持つ。南はインチョン(仁川)広域市と接し、西は江華島(仁川広域市江華郡)と2本の橋で結ばれ、最北部は軍事境界線に接する。また、日本や中国、台湾などの近距離国際線も就航している金浦空港はかつて金浦郡(現・金浦市)にあったが、空港がある地域は1963年にソウルに編入された。しかし、空港の名称は現在も「金浦」のままとなっている。一方、首都のソウルは、25の区からなる、人口1000万人の大都市。
先月30日に金浦市で開かれた首都圏の交通対策について議論する懇談会で、「国民の力」のキム・ギヒョン代表は、金浦市をソウル市に編入する案を党の重点政策として進める考えを示した。キム代表は同日、国会で記者会見し「ソウル周辺都市の住民の意思を尊重して生活圏と行政区域を一致させることが国民のための道」とし、「そのような原則のもと、住民の意思を最大限尊重して処理するのが正しい」と述べた。同党は金浦市をソウル市に編入するための特別法案を近く、国会に提出する方針。韓国の公共放送KBSは「合併が実現すればソウルが60年ぶりに拡大する」と伝えた。
ソウル市のオ・セフン市長と金浦市のキム・ビョンス市長は6日に会談した。韓国メディアによると、キム市長はオ市長に対し、金浦市がソウルに編入されれば、成長とシナジー効果が期待できると強調した。オ市長は「最も重要なことは『市民の意見』」と、両市民の同意を基に議論を進めていく必要があると指摘した。
編入案が発表されるや、さまざまな反応が上がっている。韓国メディアのマネートゥデイは「市民に聞くと、公共交通施設の拡充に期待の声が上がるなど、おおむね肯定的に受け止めているようだ」と報道。「編入されればインフラが大きく発展し、出勤も便利になりそうだ」などと、編入によるメリットに期待する市民の声を紹介した。
一方、金浦市がある京畿道のキム・ドンヨン知事は6日の記者会見で「国民に対する欺瞞(ぎまん)であり、選挙に向けた政治ショーだ」と批判した。韓国では来年に総選挙を控えている。キム知事は「保守か進歩かは関係なしに、この30年余りの大韓民国の一貫した国家発展の方向性は、国土の均衡ある発展と地方分権、地方自治だ」とし、「過度なソウル集中と地方消滅を防ごうという根本価値が、与党の総選挙向け戦略によって損なわれるというのは情けない」と述べた。その上でキム知事は「『国民の力』は金浦市のソウル編入を『メガシティ』をつくるものだと主張しているが、これは緊縮財政をしていながら健全財政だと言い張り、地方分権と地方自治を進めると言いながら『ソウル共和国』をつくろうとする二律背反であり、自己矛盾だ」と批判した。
また、韓国紙の東亜日報はソウル市について「首都圏への過度な偏重による深刻な労働力不足、不動産価格の暴騰、出生率の低下など様々な深刻な問題が生じている」と指摘。「最優先課題は、首都圏内でソウルの面積を増やすのではなく、地方を発展させて首都圏に集中した産業と人口を分散させることだ」とした。韓国紙のハンギョレは、金浦がソウルに編入することでソウルが北朝鮮と接する軍事境界線隣接地域になるとし、「金浦のソウル編入は『ソウル死守』という現在の韓国軍の作戦計画にも大きな影響を及ぼしうる」と指摘した。
一方、与党「国民の力」は7日、メガシティ構想の実現に向けた特別委員会の初会議を開き、ソウルと南部の釜山、南西部のクァンジュ(光州)、中部のテジョン(大田)、南東部のテグ(大邱)を結ぶ「超広域メガシティ」構想を打ち出した。「メガシティ」の範囲をソウル以外の全国主要都市に拡大する方針で、これに、東亜日報は「ソウルと隣接する境界都市のソウル編入問題で始まったメガシティをめぐって、与党の広域自治体の首長が『政治ショー』などと批判したことを受け、対象を全国に拡大し、修正に乗り出したとみられる」と指摘した。
韓国でにわかに白熱し始めた「メガシティ」をめぐる議論。しかし、方向性などが明確になっていない中、思い描く構想だけが次第に壮大になっている印象は否めない。
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