「9.19南北軍事合意」と呼ばれるこの合意は、2018年9月、当時のムン・ジェイン(文在寅)大統領と北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記が署名した「平壌共同宣言」の付属合意書だ。南北が軍事的緊張緩和のために努力することを申し合わせる内容で、南北は地上、海上、空中で一切の敵対行為をやめ、非武装地帯(DMZ)を平和地帯に変えるための対策を講じることとした。具体的には、軍事境界線上空への飛行禁止区域の設定、DMZ内にある監視所の撤収、黄海の北方限界線(NLL)付近の「平和水域」への転換と範囲の設定、板門店の共同警備区域(JSA)内での観光客の自由往来などが盛り込まれた。
当初は合意に盛り込まれた事項のうち、DMZ内の監視所(GP)の試験的撤去や、南北を流れるハンガン(漢江)河口での共同調査、朝鮮戦争で亡くなった兵士らの遺骨の発掘作業などが履行された。しかし、2019年にベトナム・ハノイで開かれた米朝首脳会談が物別れに終わったことで南北関係は再び冷え込み、合意の履行はストップ。専門家からは、合意締結後に南北境界地域での偶発的な衝突の可能性が著しく低下する効果があったとの評価もあるが、一度は試験的に撤去されたGPが再び設置されるなど、合意の意義は色あせたと指摘されている。
しかし、北朝鮮との融和政策を進めた文前大統領は昨年9月、「対立・敵対の歴史を終わらせるという意思を込め、『戦争のない朝鮮半島の始まり』を内外に示した。軍事的リスクを画期的に低くする実践的措置に合意した」と合意締結当時を振り返り、「特に朝鮮半島を『核兵器と核脅威のない平和の地』とする意思を内外に明確に示したことは非常に大きな意味を持つ」と強調した。
しかし、北朝鮮は合意に反する行動を続けている。合意では地上と海上、空中での敵対行為を中止するとして、南北軍事境界線から西部地域は10キロ、東部地域は15キロ内での無人機の飛行を禁止している。だが、北朝鮮は昨年12月、無人機5機を軍事境界線を越え韓国北西部の領空に侵入させた。最初に確認された1機はソウル首都圏の北部地域まで一時接近し、領空侵犯から約3時間で北朝鮮に戻った。残りの4機は北西部のカンファド(江華道)周辺で活動する航跡を見せたが、その後、姿が確認できなくなった。韓国軍は当時「明白な挑発行為だ」と批判した。
先月、国防部の長官に就任したシン・ウォンシク氏は、南北軍事合意について「できるだけ早く効力停止を推進する」と述べた。シン氏は国防部長官候補だった時から軍事合意を批判しており、破棄を主張してきた。
一方、最大野党「共に民主党」は合意を維持すべきとしている。先月開かれた国会外交統一委員会で、同党のパク・ビョンソク議員は「合意以降、境界地域での南北の偶発的な衝突の危険が減少した。合意は南北の偶発的な誤判断による衝突を防ぐ防火壁だ」と強調。「明らかな重大な挑発がない中、韓国が合意の破棄に言及すれば、北に挑発の名分を与える可能性がある」と懸念を示した。
今日13日には米韓が定例安保協議(SCM)を開くが、SCMでは南北軍事合意の効力停止問題も取り上げられるものとみられる。聯合ニュースは「シン氏(国防部長官)は今回のSCMで米国のオースティン国防長官に対し、軍事合意の効力停止の必要性を説明するとみられ、オースティン氏が支持を表明するか注目される」と伝えた。
一方、聯合によると、軍事合意の効力停止については政府内でも意見に違いがあるという。直ちに停止すべきとの見解が多いものの、韓国が一方的に効力停止を宣言するのは政治・外交的な影響が大きく、慎重に検討すべきとの声も出ている。聯合は「政府内外では、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射や偵察衛星の打ち上げなどの重大な挑発を強行する状況が生じた後に効力停止を宣言する手続きに入るとの見方が出ている」と伝えた。
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