<W解説>韓国で害虫「トコジラミ」が大量発生=「パンデミックが去ると…」と現地メディア
<W解説>韓国で害虫「トコジラミ」が大量発生=「パンデミックが去ると…」と現地メディア
韓国で害虫「トコジラミ」の発生が相次いでいる。全国各地で目撃情報が寄せられており、ソウル市内では既に全域に拡大した可能性も指摘されている。行政安全部(部は省に相当)はトコジラミの拡散防止のため、今月3日に政府合同対策本部を設置し、対策に乗り出した。新型コロナウイルスの感染拡大初期の混乱を思い起こさせる状況に、韓国紙の中央日報は「パンデミックが去るとトコジラミが来た」などと伝えている。

トコジラミは人の血を吸って繁殖を繰り返す害虫。別名「ナンキンムシ(南京虫)」と呼ばれるが、中国産の虫ではない。中国や南京に関係ないため、「ナンキンムシ」との名称は不適切だとの声が上がったことを受け、トコジラミとの名が付いたとされている。名前に「シラミ」とつくが、カメムシの仲間で、サイズはリンゴの種ほどの大きさ。ほとんどは鳥類や哺乳類に取り付き、コウモリなどを宿主とするが、ベッドやソファの隙間などの暗い空間にも生息することがある。昼間は隙間に潜り込み、夜になると出てきて人の血を吸う。通常は厚みのない平たいカラダをしているが、吸血するとぷっくりとやや膨らむのが特徴だ。伝染病を媒介することはないが、刺されると激しいかゆみが伴い、二次的に皮膚感染症や瘢痕(はんこん)を残す場合がある。中には激しいかゆみで不眠状態に陥る人もいるという。飛んだり跳躍したりすることはできないが、1匹でも室内に持ち込まれると、室内の様々な隙間に潜み、冷暖房が効いた環境で繁殖を繰り返すという。1日に3~6個産卵し、生涯産卵数は200~500個に上るとされる。主な発生時期は6~9月だが、暖房が効いた室内では冬でも発生する。トコジラミは吸血した大部分をフンとして出すため、血が混ざった赤いフンの汚れ跡が見つかれば、トコジラミが生息している可能性が高い。やっかいなのは、世界中でまん延しているトコジラミのほとんどが、殺虫剤が効かない種類で、「スーパートコジラミ」とも呼ばれる。

トコジラミをめぐっては、今年9月~10月にラグビーW杯開催中にパリや地方都市でまん延した。住宅やホテル、映画館など街の各所で目撃が相次いだ。パリは来夏に五輪開催を控えており、懸念が高まっている。

韓国では、2014年から今年までに疾病管理庁に届けられたトコジラミ関連の報告は9件にとどまっており、トコジラミは国内では根絶したとみられていた。しかし、最近になってソウルを中心に目撃報告が相次いでいる。今月7日時点で、全国17の広域自治体が確認したトコジラミの疑いがある報告は30件に上り、半数以上がソウルでのものという。聯合ニュースが伝えたところによると、「虫に刺されたがトコジラミか確認したい」「事前に防疫作業したい」などといった問い合わせが保健所に相次いで寄せられているという。実際にトコジラミは確認されており、聯合が一例として伝えたところによると、今月2日、ソウル市中区のワンルームタイプの賃貸住宅の部屋で目撃報告があり、マットレスや壁などでトコジラミが見つかった。駆除作業が行われたという。ソウルのある民間防疫業者は聯合の取材に「トコジラミに関する駆除依頼が一日に2~3回はある。10月の1か月間、ソウルだけで約80か所で駆除作業を行った」と話した。

行政安全部はトコジラミの拡散防止のため、今月1日から空港の出国譲渡海外感染症申告センターで英国やフランスなど発生国の出入国者と該当国から貨物を輸入する企業を対象に、害虫の予防規則の徹底を改めて呼びかけた。3日には、政府合同対策本部を設置し対応に乗り出した。対策本部は首相室の担当に格上げされ、7日、初会合が開かれた。

韓国政府は13日から12月8日までを集中点検・防除期間とすることを決めた。宿泊施設や公衆浴場、公共施設などを集中点検する。また、海外で効果が高いことが確認されているネオニコチン系殺虫剤の使用を承認する計画。これまでに、トコジラミが特に多く確認されているソウル市は「トジジラミ通報センター」の運営を開始。市民や業者がトコジラミの発生届を提出すると、その情報が市の関連部署や保健所にリアルタイムで共有する仕組みを整えた。

全国的な大量発生となれば、社会問題化する可能性もあり、政府としては現在の段階で何としても封じ込めたい考えだ。

Copyrights(C)wowkorea.jp 5