北朝鮮は5月31日、偵察衛星「マンリギョン(万里鏡)」を乗せた新型ロケット「チョルリマ(千里馬)1型」を打ち上げたものの、1段目の分離後、2段目のエンジンに異常が発生し、推進力を失って朝鮮半島西方の黄海に落下した。そして8月24日に再び打ち上げを行ったが、またも失敗した。打ち上げは日米韓が国連安保理決議に違反するとして中止を強く求める中で強行された。直後に日米などの要請で開かれた国連安保理の緊急会合には、関係国として北朝鮮のキム・ソン国連大使も出席。キム大使は「われわれは安保理決議を認めておらず、それに縛られることはない」とした上で「偵察衛星の打ち上げは、米国とその追従勢力による敵対的な軍事行動を阻止するための合法的な自衛権の行使だ」と正当性を主張した。一方、北朝鮮の国家宇宙開発局は声明を発表し、「10月に3回目の発射を断行する」と表明した。
北朝鮮の朝鮮中央通信は先月、国家航空宇宙技術総局の研究者名義の記事を掲載し、軍事偵察衛星の運用の正当性を主張した。北朝鮮は9月に開いた最高人民会議で、国家宇宙開発局を改編し、国家航空宇宙技術総局へと変更する案を採択しており、朝鮮中央通信が掲載した研究者名義のこの記事は、同総局の新設後初となる論評だった。論評でリ・ソンジン研究員は、米国が日本や韓国とともに宇宙の軍事活用を進めていると訴えた上で、軍事偵察衛星について「わが国の安全や利益、生存権を保証するために不可欠な戦略的選択だ」と主張した。
3回目の打ち上げについて、韓国統一研究院(KINU)は先月10~26日の間に行われる可能性が高いと予測。日米韓などは警戒を強めていた。しかし、結局、先月の打ち上げはなかった。韓国メディアは、5月と8月の発射に失敗した際の技術的問題が解消していない可能性があると報じた。
今月5日付の朝鮮中央通信は、北朝鮮の最高人民会議(国会に相当)常任委員会総務会議で、今月18日を「ミサイル工業節」とする政令を全会一致で採択したと伝えた。北朝鮮は昨年の同日に、米国本土を射程に収める可能性がある新型ICBM「火星17型」の最終発射実験に成功したとしており、「ミサイル工業節」はこれを記念して制定したという。5日付の同通信は「最強のICBM保有国の威容を満天下にとどろかせた昨年11月18日を歴史の日として永遠に記録する」とした上で、「ミサイル工業節」の制定について「わが国家の限りなく強大な国力をさらに強く固めていく確固たる意志の表れになる」と強調した。
しかし「ミサイル工業節」を迎えたが、北朝鮮メディアはこれまでのところ、この記念日について触れていない。記念日から一夜明けた19日付の朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」も、1面は今年の経済の重要目標の達成を呼び掛ける記事だった。
また、前述のように北朝鮮が10月に行うと予告するも未だ実施されていない軍事偵察衛星の3回目の打ち上げが、「ミサイル工業節」に合わせて行われるとの見方があったが、それもなかった。
こうした中、韓国国防部のシン・ウォンシク長官は19日、公共放送KBSの番組で発射は今月中にも行われる可能性があるとの見解を示した。シン氏は「韓米合同で(北朝鮮の動向を)みている」とした上で、「1週間前後で発射できる準備が着々と進んでいる」と説明した。さらに、「偵察衛星を打ち上げるには、エンジンを準備して試験をしなければならないが、ロシアの支援を受けて、エンジンの問題点をほぼ解消したと判断している」との見解を示した。
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