< W解説>韓国の犬食文化、消滅か?政府・与党が犬の食用禁じる特別法の法案提出準備(写真はサムゲタン(参鶏湯))
< W解説>韓国の犬食文化、消滅か?政府・与党が犬の食用禁じる特別法の法案提出準備(写真はサムゲタン(参鶏湯))
韓国の聯合ニュースによると、韓国政府と与党「国民の力」は今月17日、国会で協議会を開き、食用犬の飼育と食肉処理、流通、販売を禁じる特別法の年内制定を目指すことで一致した。犬食文化が残る韓国。しかし、最近は若い世代を中心に犬肉の食用に反対する動きが見られ、国内において「犬肉食用禁止」をめぐる議論が続いてきた。特別法が制定されれば、犬食文化は消滅することになりそうだ。

韓国で犬肉料理といえば、滋養食として犬肉を煮込んだ「ポシンタン(補身湯)」が有名だ。韓国では、日本の「土用の丑の日」にあたる「ポンナル(伏日)」が7~8月にかけて計3日あり、補身湯や「サムゲタン(参鶏湯、鶏肉を使った滋養食)」を食べる習慣がある。かつて韓国には犬肉を食用として販売する店が連なる犬肉3大市場として、南東部・テグ(大邱)の大邱チルソン(七星)市場と、ソウル近郊のキョンギド・ソンナム(京畿道・城南)のモラン(牡丹)家畜市場、南部のプサン(釜山)のクポ(亀浦)家畜市場があったが、現在残っているのは大邱チルソン市場のみだ。

犬食文化が根付いてきた韓国だが、最近は若者を中心に犬食を敬遠する人も多く、この文化は薄れつつある。「犬食用問題の議論のための委員会」が昨年、全国の18歳以上の男女1514人を対象に行った意識調査では、「犬食文化を継承すべき」との回答は28.4%にとどまった。一方、「犬の屠殺(とさつ)の合法化に反対」との回答は52.7%に上った。

一昨年9月、愛犬家として知られ、在任中、大統領府の公邸でも犬を飼っていた当時のムン・ジェイン(文在寅)大統領が「犬の食用禁止を慎重に検討する時期」との考えを示した。このことがきっかけで、犬肉を食用とすることをめぐる議論が活発化した。

当時、犬を保護すべきとする動物保護団体と犬食業界の団体の間で主張は真二つに分かれた。文氏が犬の食用禁止を検討するよう指示したことに畜産業団体「大韓育犬協会」の幹部は、出演した当時のラジオ番組で「非常に悲しい。大統領が妄言を吐いたといえる」とし、「犬食はキムチのようにグローバル化することができる」と訴えた。一方、動物愛護団体「動物自由連帯」の代表は、「大統領が犬の食用問題に関心を持って下さったことを歓迎する」とした上で、「人間によって犠牲になる動物の数を減らしていくべきであり、既に高カロリーが問題となっているのに、犬まで食べなければならないのか」と疑問を呈した。

複数の動物保護団体で構成する「動物圏対国民連帯」は昨年8月の「伏日」、犬肉市場の閉鎖を求めて大邱七星市場でデモを行った。「動物圏対国民連帯」のメンバーは「犬の食用は人権蹂躙(じゅうりん)。撤廃すべき」と声を上げた。

政権が変わり、文氏と同じく愛犬家として知られるユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は、大統領選候補の時から犬の食用自体には反対の立場を示していた。しかし、法制化については「個人の選択の問題」としてきた。

今年4月には尹大統領の夫人、キム・ゴンヒ(金建希)氏が、「犬肉食用禁止」をめぐる論争に言及。尹氏と共に愛犬家として知られる金夫人は、動物保護団体の関係者との昼食会で「犬肉の食用を尹政権の任期内に終息させるよう努力する。それが私の本分だと考える」と述べた。「終息させる」とは即ち犬肉の食用を「禁止とする」意志を示したものと当時、受け止められた。

そして今月17日、与党「国民の力」のユ・ウィドン国会政策委員会議長は、政府と与党が年内にも犬肉の食用を禁止する法案の年内提出を目指すことで一致したと明らかにした。ロイター通信によると、ユ氏は政府当局者と動物の権利保護を求める活動家との会合で「犬肉の消費をめぐる社会的な対立と論争を、特別法の施行を通じて終わらせる時が来た」と述べ、超党派の支持を得て議会で可決されるとの見通しを示したという。

また、ユ氏は、特別法の公布後、直ちに食用犬の飼育農家と食肉処理・流通業者、犬肉を扱う食品店などは自治体に届け出るとともに、犬の食用利用中止に関する計画書を提出することになると説明した。政府は、特別法により転業や廃業を余儀なくされる関係業者の支援を行っていく。また、業者の廃業にかかる期間を考慮し、法施行から3年間の猶予期間を設ける方針だ。

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