ヒョンデ(現代)製鉄の水素供給設備が一部故障したために、先週からソウル・キョンギド(京畿道)とチュンチョンド(忠清道)、カンウォンド(江原道)を合わせた中部圏で水素自動車の充填に大混乱が起きている。韓国政府は業界と代替品の供給などの対策作りを急いでいるが、水素自動車の充填は当分の間ストップする見通しだ。

1ヵ所の水素の生産拠点の設備故障により、首都圏を含む中部地域全体に水素自動車の充填に支障が生じ、政策の失敗を指摘する声が高まっている。エコカーが急速に普及しているのにもかかわらず、水素の生産や充填インフラの構築を疎(おろそ)かにし、水素市場の成長が遅々として進んでいない。

韓国政府と関連業界などによると、23日から中部圏の水素の充填所では閉店時間を通常の午後10時から午後5時から7時に繰り上げるなどの時短運営を始めている。その影響により、水素自動車のドライバーは水素を充填するために数時間並ばなければならない状況だ。
現代製鉄のタンジン(唐津)製鉄所の水素供給設備3つのうち2つに問題が生じ、水素の供給を受ける水素充填所の在庫にも問題が生じている。現代製鉄が製造する輸送用水素は年間約3500トン規模で、首都圏など中部地域の需要の20%から30%を供給している。

産業通商資源部は問題が大きくなっていることを受けて24日に水素の需給状況点検会議を開き、水素を供給している会社や水素自動車の充填所を運営している企業などに協力を要請した。25日からは京畿道ヨンイン(龍仁)市の本来唐津製鉄所が供給している水素充填所の供給分を他の水素供給会社からの供給に代替している。

しかし、今週も中部地域の一部の水素充填所の在庫不足による支障が続く見通しだ。全国的に輸送用水素の供給を短期間で大幅に増やすのは難しいため、代替の水素を確保したとしても生産施設の供給ストップを完全に補うことは困難とみられている。

現代製鉄は今週中に唐津製鉄所の水素生産設備の修理を完了する予定だが、一部の部品については輸入しなければならないため、完全な復旧までにはさらに時間が必要だという。韓国政府と業界は水素の供給が正常化するまでは水素自動車のドライバーに水素充填所の情報サイトなどを活用して水素の供給が可能な充填所を探すことを呼びかけている。

この事態に韓国政府の失策が糾弾されている。水素自動車のドライバーたちは当初から充電インフラが足りないと訴えてきたからだ。実際に水素経済総合情報ポータルサイトによると、韓国全土の水素自動車の登録台数は3万3796台に達しているが、水素の充填所は255ヵ所しかない。

劣悪な水素の充填インフラは水素自動車の販売台数が徐々に減少している原因として挙げられる。今年の第1四半期から第3四半期の水素自動車の販売台数は4013台で、前の年の同期に比べ47.3%減少している。このような悪循環が繰り返されれば、生産・流通・消費を含めた水素産業全体が縮小する懸念がある。

韓国政府の水素経済を活性化させる政策も後退している。2019年の水素経済活性化ロードマップでは、2040年までにバス4万台、トラック3万台など水素自動車の販売台数を290万台とし、これに合わせて水素生産・輸入供給計画を立てている。この期間に充電所は1200ヵ所まで増やすとも発表している。

しかし、2022年11月に発表した水素経済政策では、「2030年までに水素バスやトラックを3万台まで普及させることと液化充電所70ヵ所の拡充」に目標値を大幅に縮小した。質的な成長のために過度な量的成長目標を現実化したとしているが、水素自動車と水素充填所の普及計画は全く立てられていない。

産業部エネルギー政策室のイ・ホヒョン室長は26日にも水素バス専用のインチョン(仁川)空港第1ターミナルにある水素ステーションと、代替品の供給を受けている龍仁エバーランド内の水素ステーションを訪れ、需給状況の視察確認を行った。イ室長は「今週からは需給状況が徐々に改善される見込み」と述べ、「特に市民の足であるバスの運行に影響が出ないよう管理する」と強調した。
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