北朝鮮は今年5月31日、北西部ピョンアンプクト(平安北道)のソヘ(西海)衛星発射場から万里鏡1号を乗せた宇宙発射体「千里馬1号」を発射した。しかし、ロケットは1段目の分離後、2段目のエンジンに異常が発生し、推進力を失って朝鮮半島西方の黄海に墜落した。北朝鮮も打ち上げ後に失敗を認めた。
韓国軍は打ち上げから約1時間半後、落下地点で発射体の残骸とみられる物体を見つけ回収作業に着手した。しかし、残骸は重量があり作業は難航。海軍の潜水隊員も投入したが、円筒形の残骸は表面が滑りやすく、ワイヤーの固定が難しいため引き揚げ作業は時間を要した。水深75メートルの海底に沈んだ残骸に潜水士がワイヤーを取り付け、慎重に作業を進め、残骸発見から15日後の6月15日、ようやく引き揚げに成功した。その後、衛星も回収し、米韓の共同調査団が分析を進めた。
韓国軍は7月に分析結果を公表し、「衛星体は軍事偵察衛星としての実用性は全くない」と結論付けた。一方、韓国軍は、そう結論付けた根拠は示さなかった。韓国紙の朝鮮日報が当時伝えたところによると、偵察衛星の場合、解像度は少なくとも1メートルは必要になるが、この衛星は通常の商業衛星と比べてもその性能はかなり劣るレベルだった。分析の結果、北朝鮮が主張する技術水準に達していなかったことが明らかになった。
そして、韓国の公共放送KBSなど韓国メディアが今月28日までに伝えたところによると、5月に打ち上げに失敗した万里鏡1号の残骸を韓国軍と米軍がさらに詳しく分析を進めた結果、衛星の主要部分に韓国製の電子部品が使われていたことが分かった。KBSは「専門家らは、海外で流通している韓国製の電子部品を北朝鮮が中国などを経由して密輸し、偵察衛星の開発に使用した可能性があると分析している」と伝えた。
また、東亜日報によると、この衛星には、日本製の商用デジタルカメラが取り付けられていたことも分かった。同紙によると、機種は生産が終了した旧式モデルで、分析の結果、最大解像度は縦横5メートルの物体を識別できる程度だという。
北朝鮮は国際社会から制裁を受けており、衛星の製造に関連する部品や光学装置の海外からの調達は、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議に違反する。
万里鏡1号の打ち上げに5月、8月と失敗した北朝鮮は今月21日、3回目の打ち上げを行った。翌22日の朝鮮中央通信は成功を伝え、衛星を地球周回軌道に「正確に進入させた」と主張した。打ち上げにはキム・ジョンウン(金正恩)総書記も立ち会ったといい、同通信は金総書記が関係者を「熱烈に祝福した」と報じた。
その後、北朝鮮は、打ち上げた万里鏡1号が、朝鮮半島のほか、米領グアムやハワイなどにある米軍の主要施設を撮影したと主張。さらに、朝鮮中央通信が28日に伝えたところによると、万里鏡1号は27日夜には米首都ワシントンのホワイトハウスや郊外の国防総省を撮影し、金総書記が撮影資料を確認した。しかし、これまでのところ、撮影したとされる画像は公開されておらず、日米韓では、衛星の運用能力に懐疑的な見方も出ている。東亜日報は「解像度レベルなど偵察能力を隠そうとしているとみられる」と指摘した。
同紙によると、韓国政府は、適切な偵察衛星技術を確保するには少なくとも3年かかることを考慮すると北朝鮮の偵察衛星技術が正常に機能するレベルには達していないとみている。同紙は、北朝鮮が21日に打ち上げた万里鏡1号についても「韓国製だけでなく、他の国の衛星関連部品や装置も家電製品や電子機器に使われていたものを密輸し、つなぎ合わせて使用した可能性もある」と伝えている。
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