<W解説>韓国が世界遺産員会の委員国に=「佐渡島の金山」登録に影響は?
<W解説>韓国が世界遺産員会の委員国に=「佐渡島の金山」登録に影響は?
世界遺産条約締約国の総会が先月22日に、パリの国連教育科学文化機関(ユネスコ)本部で開かれ、韓国が世界遺産委員会の委員国に選出された。世界遺産委員会は、世界遺産条約の履行・執行などを担う意思決定機関として世界遺産リスト登録時に最終承認権限を持つ。現在、日本は新潟県の「佐渡島(さど)の金山」の世界文化遺産登録を目指しているが、韓国は朝鮮半島出身者の強制労働があったと主張し、登録に反発している。韓国が今回、委員国に選出されたことを受け、韓国メディアは「日本をけん制し、韓国の立場を積極的に表明できるようになるとの見方も出ている」(聯合ニュース)などと伝えている。

世界遺産委員会は、各国が推薦した世界遺産の候補を審査し、文化遺産、自然遺産、複合遺産への登録の可否などを審査する。委員国は計21か国で構成している。委員国は地域別に割り当てられており、今年で任期が終了するアジア・大洋州の1枠に、新たに韓国が選出された。韓国が委員国を務めるのは1997~2003年、2005~2009年、2013年から2017年に次いで4回目。今回の総会では韓国のほか、ウクライナ、ベトナム、ケニアなど計9か国が新たに委員国に選ばれた。任期は6年だが、慣例として4年で交代することになっている。

今回、韓国が委員国に選出されたことが、日本が目指している「佐渡島の金山」の世界文化遺産登録の審議に、今後どのような影響を与えるか注目される。

「佐渡島の金山」は、「相川鶴子金銀山」と「西三川砂金山」の2つの鉱山遺跡で構成。新潟県などは「江戸時代にヨーロッパとは異なる伝統的手工業で大規模な金生産システムを発展させた、世界的にもまれな鉱山だ」としている。

佐渡金山には戦時中、労働力不足を補うため、少なくとも1000人を超える朝鮮半島出身労働者が動員されたとされる。韓国側は、日本政府が佐渡金山の世界文化遺産登録をめぐり、対象期間を16~19世紀に限定することで日本による植民地時代に朝鮮半島出身者が強制労働させられた歴史を意図的に排除し、遺産が持つ「全体の歴史」から目を背けていると批判。現状のまま「佐渡島の金山」の世界遺産登録を目指すことに反対している。

韓国は2015年に「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に登録された際も強い反発を見せた。「明治日本の産業革命遺産」に含まれている長崎市の端島炭坑(軍艦島)には、朝鮮半島出身労働者が多数働いていた。このことから韓国側は、世界遺産登録の際、日本側に朝鮮半島出身者の当時の状況が理解できるような説明を講じるよう要請。日本はこれに応じる形で2020年、東京に「産業遺産情報センター」を開設した。しかし、韓国側は「センターの展示は強制労働させられた朝鮮半島出身者の被害が明確に説明されておらず、登録時の約束が守られていない」などと批判を強めた。

これを受けユネスコは、戦時徴用された朝鮮半島出身者に関する日本政府の説明は不十分だとする決議案を採択。世界遺産委員会は日本側にセンターの展示を念頭に改善を求め、進捗(しんちょく)状況を報告するよう求めた。日本政府は、これに応じる形で昨年末までにユネスコ世界遺産委員会に保全状況報告書を提出。世界遺産委員会は今年9月、朝鮮半島出身労働者らの歴史に関して施設の展示内容を補強するなど、日本が行った追加の取り組みを評価する決議を採択した。一方、決議では、日本に韓国など関係国との継続的な対話を促したほか、今後の取り組みについて来年12月1日までに報告するよう求めている。

韓国側は「明治日本の産業革命遺産」に関する問題が完全に解決されていない中で、同じく朝鮮半島出身労働者が働いた歴史がある佐渡金山が世界遺産登録を目指すことを問題視している。

しかし、日本政府は昨年2月、「佐渡島の金山」について世界文化遺産候補としてユネスコに推薦することを正式決定した。今年の登録に期待が高まったが、ユネスコは提出された推薦書の不備を指摘。政府は昨年7月、目標としていた2023年の登録実現は難しくなったと発表した。ユネスコが問題視したのは「西三川砂金山」の導水路跡に関する説明部分で、日本政府は指摘された部分を修正して今年1月、推薦書を再提出した。先月30日には新潟県の花角英世知事と佐渡市の渡辺竜五市長がフランス・パリを訪問し、ユネスコ日本政府代表部の大使公邸で開かれたセミナーに出席。委員国の大使らに文化的な価値をPRした。

「佐渡島の金山」の世界遺産登録の可否が来年の世界遺産委員会で決まる見通しとなる中、今回、世界遺産委員会の委員国に韓国が選出されたことに、韓国メディアは「委員国としての韓国の意見を表明する機会があるものとみられる」(ハンギョレ)、「韓国の立場をより積極的に表明できるようになる見通し」(KBS)などと伝えた。

今月1日にはユン・ドクミン(尹徳敏)駐日大使が「佐渡島の金山」を訪問。聯合ニュースによると、尹大使は、両国間に存在するつらい歴史を直視することが未来志向の関係の礎になるという点を踏まえ、世界遺産に登録される際には強制労働を含めた全体の歴史が反映されるよう、日本側と対話を続ける方針を改めて示したという。

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