中国当局が11月末から自国の尿素水の原料の供給支障を懸念して非公式の輸出規制を行い、韓国国内のガソリンスタンドなどではすでに買いだめのきざしが現れている。特に2年前に尿素水の供給に支障が出た貨物車などディーゼル車のドライバーは大きな不安を抱いている。

韓国政府は現場を点検し会議を開く一方で、「ホットライン」を通じて中国政府に問題解決を要請するなど対応に追われている。政府ではすでに3ヶ月分の尿素水を備蓄しており、東南アジアや中東など代替の輸入先も確保しているため、2年前のような混乱は起こらないと政府ではみている。ただし、転売を目的とした買いだめが起こる可能性などがあり、状況を注視している。

韓国政府と化学業界などによると、11月末に中国企業が韓国に輸出する予定だった尿素水の船積み作業が中国海関(税関)によって中断され、尿素水の輸入に支障が生じている。中国当局が公式に尿素水の輸出を制限しているわけではないが、中国国内の尿素水の供給に支障をきたす懸念があるために、自国の企業に輸出を自粛する方針を伝えたものとみられる。

尿素はディーゼル車の温室効果ガス排出量を減らす尿素水を作るための主要材料だが、農業用肥料としても使われる。このため、中国では毎年10月から3月まで農業用の尿素の需要が急増する。中国当局では、自国内の尿素の需給バランスが崩れることによる価格上昇を抑制しなければならない状況だ。業界のある関係者は「中国政府が農業の準備時期に尿素肥料価格の上昇を抑えるために(尿素輸出を)防いでいると聞いている」と語った。

しかし、まだ韓国国内の尿素水の生産に支障はない状況だ。ただし、2年前に尿素水の不足による大混乱を経験した現場では、尿素水の販売価格の引き上げとディーゼル車のドライバーによる買いだめの兆しも少しずつ現れている。インチョン(仁川)市ミチュホル(弥鄒忽)区でガソリンスタンドを経営するイムさんは「普段なら10リットル入りの製品を300缶から400缶は積んでおくが、この半月間は尿素水を確保できず、100缶しか在庫がない」と話し、「在庫不足のために価格を1缶1万ウォン(約1120円)から1万5000ウォン(約1680円)に値上げした」と語った。ケヤン(桂陽)区でガソリンスタンドを経営するチェさんも「当面は在庫があるが、一度にたくさん買おうとするドライバーがいて、1人当たり3缶までに購入制限している」と話した。

これらは決して根拠のない懸念ではない。尿素水の生産に必要な尿素の供給量の90%を依存する中国産尿素の輸入の支障が長期化すれば、尿素水を手に入れることができずにディーゼル車を運行できなかった2年前の状況が再発する可能性があるためだ。このような懸念の中、韓国国内の尿素水生産企業であるKGケミカルとロッテ精密化学の株価は4日にそれぞれ8.67%と3.33%上昇した。

関税庁によると、韓国は今年1月から10月ベースで尿素水生産用尿素の91%を中国から輸入している。2021年の尿素水不足の影響を受けて中国産の比率が71%、2022年には67%まで減っていたが、中国産製品の価格競争力のために今年に入って再び輸入が大きく増加した。肥料用尿素は中国産の比率が22%と低く、大きな影響はない。

この日、産業通商資源部と国務調整室、企画財政部、外交部などの関係省庁は、車両用尿素を輸入する7社の関係者が参加し対応会議を開き、対策作りに乗り出した。韓国政府は現場の懸念を払拭することに注力している。特に、中国側の尿素の輸出制限が公式措置ではない点や、国内在庫が十分な点、有事の際の代替輸入先を確保している点などを強調している。中国産の依存度が97%に達し、国内の在庫や代替輸入先がなかった2年前とは状況が全く違うという説明だ。

産業部のイ・スンリョル産業政策室長は「現在、国内の在庫と中国以外からの輸入予定物量が3ヶ月分確保されており、東南アジアや中東など代替輸入先もある」と述べ、「これまで業界とともに危機に対応した体制を構築してきたため、今回も尿素の需給に支障がないよう徹底的に対応していく」と述べた。

また、中国当局とのホットラインを通じて現地の円滑な尿素の輸出通関も要請した。駐中大使は尿素の通関に支障が出ていることを確認した1日に、中国国家発展改革委員会などに公文を発送し、当局から「関連内容を把握し、後続の措置を講じる」という回答を受け取っている。中韓自由貿易協定(FTA)の発展案について話し合うために中国を訪問中の産業通商部のアン・ドクグン交渉本部長も4日に中国商務省の王受文国際貿易談判代表と会談し、早急な措置を求めた。

中国外交部の汪文斌報道官はこれについて4日の定例記者会見で、韓国記者の関連質問に対し「中韓両国の関連部署がこれについて連絡している」と答えた。

しかし専門家たちは、米中貿易紛争の中でこのようなことがいつでも繰り返される可能性があるとし、政府主導の供給網構築を急がなければならないと提言している。

イファ(梨花)女子大学経済学科のソク・ビョンフン教授は、「価格競争力を考えると中国産の尿素に頼ることは避けられない」と語り、「普段から備蓄量を増やし、日本やベトナムのような周辺国からただちに必要な分量を確保する体系を作り、尿素水不足の不安をなくさねばならない」と述べた。

大韓商工会議所のキム・ヒョンス経済政策チーム長は「いつどんな供給網にリスクが発生するか分からない状況だ」と述べ、「供給網の多角化と自立化のための全面的な政策支援が必要だ」と強調した。
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