<W解説>韓国の大学入学共通テスト「修能」の採点結果発表=「キラー問題」除外で難易度に変化は?
<W解説>韓国の大学入学共通テスト「修能」の採点結果発表=「キラー問題」除外で難易度に変化は?
先月、韓国で行われた日本の大学入学共通テストに相当する、大学修学能力試験(修能)の採点結果が今月7日に発表された。今年の修能は高校の学習範囲を超えた超難問、いわゆる「キラー問題」を除外した形で実施され、難易度の変化に注目が集まっていたが、易化するとの予想は外れ、全体の難易度は、昨年より上がっていたことが分かった。

韓国社会は言わずと知れた「超学歴社会」。数ある大学の中でも、ソウル大学、ヨンセ(延世)大学、コリョ(高麗)大学の3校は名門難関大学として社会的評価が高く、アルファベット表記の頭文字を取って「SKY」と呼ばれる。大学卒業後、大企業に就職することを見据え、受験生たちは「SKY」に代表される難関大学を目指す。

修能の日ばかりはさまざまな公共機関が協力し、あらゆる面で受験生が優先される。官公庁や一部企業は出勤時間を遅らせ、ソウルの公共交通機関は地下鉄やバスを増便する対応を取る。また、各地の空港では、リスニングの試験中、航空機の離発着が禁止される。

今年の修能は約50万4000人が受験した。修能ではこれまで毎年、高校の学習範囲を超えた超難問「キラー問題」が出題されてきた。厄介なことに、このキラー問題は配点が高めで、この問題のでき次第で入学できる大学も変わるとも言われた。高校の授業だけでは太刀打ちできない「キラー問題」への対策も必要となることもあって、受験生たちはこぞって塾・予備校に通う状況が続いてきた。こうした事情が親の過度な教育費支出を誘発する一因にもなってきた。借金をしてでも子供の教育費を捻出(ねんしゅつ)する親も少なくないとの指摘もあった。

こうした状況に、「年金」「労働」「教育」の「3大改革」を国家的課題として掲げるユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は懸念を示し、今年6月、学校の授業で扱わない内容を修能の出題から除くよう教育相らに指示した。このことが報道されると、受験生や保護者らの間では「今年の修能は易しくなる」といった憶測が飛び交う事態にもなった。直後に教育部(部は省に相当)は「大統領の発言は『公正な修能』をめぐる指示だった」などと火消しに乗り出したが、最大野党「共に民主党」は当時、「尹大統領の軽口で、罪のない生徒と保護者だけが大混乱に陥った」などと批判した。

尹大統領の指示の意図するところは、私教育に偏重している韓国の教育を改め、公教育のさらなる充実を図ることを念頭に置いたものだった。尹大統領は今年の新年の辞で教育改革について「未来世代が望む教育が受けられるよう、教育課程を多様化し、誰にでも公正な機会が与えられるようにする」と語っていた。

実際、今年の修能に高校の教育課程を超えた問題は出なかった。難易度の変化に注目が集まる中、韓国教育課程評価院は今月7日、採点結果を発表した。韓国紙の東亜日報は、この日公表された、個人の点数が受験生全体の平均とどの程度差があるかを示す標準点数の最高点で難易度を分析。試験が難しく、平均が低ければ標準点数の最高点が上がる。同紙によると、受験業界では標準点数の最高点が140点以上なら「難しかった」と評価するという。標準点数の最高点数は国語が150点で、昨年より16点高く、数学は148点で昨年より3点高かった。国語の標準点数の最高点は2019年と並んでこれまでで最も高く、高難易度だったことがうかがえる。絶対評価で行われる英語は、最上位の「1等級」と判定された受験生の割合がこれまでで最も低かった。東亜日報によると、ある受験生は同紙の取材に「キラー問題がないと言われたが、キラー修能だった」と振り返った。

今年の修能は「キラー問題」こそ出題されなかったものの、高校教育課程の範囲内で様々なタイプの難問が出題され、相変わらずの高難易度だったことがうかがえる。教育部(部は省に相当)は、成績が優秀な受験生を適切に判別するための措置だとしている。

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