韓国軍の精神教育の教本「精神教育基本教材」に「従北勢力は敵」という表現が再び登場した。この表現が使われるのは2013年以来10年ぶりのことだ。特に今回の教材では3・15不正選挙や四捨五入改憲
などイ・スンマン(李承晩)元大統領のあやまちについての記述はなく、一方的に美化する内容が多数盛り込まれている。

共に民主党のチョン・ソンホ議員室によると、韓国国防部は5年ぶりに全面改正した「精神教育基本教材」を通じて北朝鮮に対する見方を大幅に拡充し、「大韓民国の安保を深刻に脅(おびや)かす主体である北朝鮮政権と北朝鮮軍は明白な韓国の敵」と明示している。

2019年のムン・ジェイン(文在寅)政権当時に発刊された教材では、北朝鮮軍と北朝鮮の政権を「敵」と規定していた2013年当時の内容を「現実的な軍事的脅威」という表現に入れ替えていた。特に、大韓民国を脅かす内部勢力と規定した「従北」などの内容も削除していた。

先立ってパク・クネ(朴槿恵)政権当時、2013年に発刊された基本教材では「思想戦で勝利する道」とのタイトルで従北勢力を「国論分裂と社会混乱を招き、大韓民国を威嚇(いかく)する内部勢力」と規定していた。しかし、韓国社会で従北勢力という概念は政治的にセンシティブな事案であるため、これを韓国軍の将兵に教育するのは不適切だとの指摘が多く、2019年にこの内容は教材から消えた。

今回の精神教育基本教材では「北朝鮮の『対南赤化計画』によって、韓国内部には大韓民国の正統性と自由民主主義体制を否定し、北朝鮮の3代世襲政権と最悪の人権蹂躙(じゅうりん)の実態、深刻な経済難などに対しては沈黙し、北朝鮮を無批判的に追従する勢力が存在する」として、これを「北朝鮮に利し、大韓民国の安保と利益を脅かす韓国内部の脅威勢力」と規定している。

さらに「統一革命党事件、民族民主革命党事件、朝鮮労働党中部地域党事件」などが代表的な北朝鮮の地下党の構築事例だとして、「2000年代以降に摘発された事例としては一心会事件や王在山スパイ団事件があり、2014年には国会議員の内乱扇動罪によって政党が解散するという前例のない事態も起きた」と詳しく紹介している。このような内容はこれまでの精神教育教材にはなかった内容だ。

さらに今回発刊された教材には、李承晩元大統領のあやまちには背を向けて、功績だけを褒め称えている。新教材に李承晩元大統領を紹介する別途の段落があるほどだ。新教材では李元大統領を「混乱する国内外の状況の中で自由民主主義を先導した」と表現し、「慧眼(けいがん)と政治的決断により共産主義の拡散を阻止した指導者」と強調している。

その一方で、韓国戦争中のハンガン(漢江)人道橋爆破などの無責任な行動と3・15不正選挙と四捨五入改憲に象徴される長期独裁者という点などで否定的な評価が少なくないにもかかわらず、新教材にはこのような過ちは全く含まれていない。
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