民生を強調した韓国政府...問題は物価に追いつかない所得
民生を強調した韓国政府...問題は物価に追いつかない所得
2日に公式就任した韓国のチェ・サンモク(崔相穆)経済副首相兼企画財政相は、就任演説で「物価の安定基調を早期に定着させたい。輸出回復の流れを民生と内需のすべての分野に広め、民生経済の回復に全力を尽くす必要がある」と述べた。

 崔氏が政府第2期経済チームの最初の課題として「民生経済の回復」を強調したのは、それだけ韓国の国内景気が深刻であるためだ。昨年、韓国は99億7000万ドルの貿易収支赤字を記録した。2022年に続き2年連続の赤字だ。ただ、昨年、貿易収支の赤字規模は2022年の477億8000万ドルに比べて縮小した。下半期に入ってようやく輸出は回復しているものの、内需景気はなかなか回復の兆しが見えない状況だ。

 韓国は昨年、第3四半期(7~9月)の国内民間消費の増加率が前年同期比0.2%増加にとどまった。国内民間消費の増加率は昨年第1四半期(4.6%)まで高い増加率を維持したが、第2四半期は1.5%、第3四半期は0%台に落ち込んだ。2020年第4四半期に6.4%急落して以来、2年3四半期ぶりに最も低い。国際的に比較しても深刻だ。経済開発協力機構(OECD)の平均(1.5%)にも及んでいない。米国・英国・ドイツ・フランス・日本・イタリア・カナダなど主要7か国(G7)の平均消費増加率は1.2%で韓国の6倍だった。

 これは高金利・高物価の影響が本格化したためとみられる。実際、2022年1月に1.25%だった基準金利は2023年1月に3.5%まで急騰し、1年中3.5%の高金利を維持した。昨年第3四半期の家計信用(家計負債)残高は1875兆6000億ウォンで、前四半期比0.8%(14兆3000億ウォン)増加したことが分かった。第2四半期(0.4%)に続き2四半期連続で増加し、増加幅は2倍程度に拡大した。特に、家計ローンの延滞率も昨年下半期以降、上昇傾向を持続している。2022年12月に0.66%だった延滞率は昨年1月に0.76%に上昇し、8月には0.95%に急上昇した。9月も0.89%を記録している。

 韓国の物価は驚くほど上昇した。昨年、消費者物価指数の前年比上昇率は3.6%だった。昨年の5.1%より減速したが、コロナ禍以降、インフレ局面に入った2021年の2.5%より1.1%ポイント高い。コロナ禍以前の2016~2018年の消費者物価指数上昇率は1%台で、2019年は0.4%だった。今年の物価上昇率は韓国銀行の目標である2%を上回る数値だ。韓国政府が昨年下半期に予想した物価上昇率の3.3%より0.3%ポイント高い水準でもある。

 国民への打撃も大きかった。「食料品」や「電気・ガス・水道」など生活を営むのに欠かせない品目の物価が大幅に上昇した。実際、昨年の消費者物価のうち、代表的な食料の指標である加工食品の物価上昇率は6.8%で全体(3.6%)の1.9倍を記録した。外食物価上昇率も6%で1.7倍という調査結果が出ている。これは、加工食品・外食など食べ物の物価負担が他の品目に比べてそれだけ大きかったということだ。また、電気料や都市ガスなどの価格が上昇し、電気・ガス・水道の物価も昨年より20%上昇した。

 一方、「賃金」は物価に追いついていない。実際、今年1月から10月までの月平均名目賃金は394万3000ウォンで前年同期比2.7%増加したが、同期の消費者物価上昇率は3.7%で、物価を反映した実質賃金はむしろ1%下落した。高物価の影響で名目賃金が上がっても実質的には増えていない。実質賃金は先月、7か月ぶりに増加した後、再び下落に転じた。全体所得から利息や税金などを除いた消費や貯蓄に使える可処分所得は393万1000ウォンで物価上昇率(3.6%)を下回る1.2%の増加にとどまった。

 問題は、今年も消費が回復する可能性が低いという点だ。韓国銀行は今年の民間消費増加率として1.9%を提示した。昨年と似たような水準だ。韓国開発研究院(KDI)も2024年の経済展望で「民間消費は高金利基調による商品消費の低迷が続き、前年(1.9%)と同様の1.8%の増加にとどまるだろう」と予測した。さらに、テヨン建設がワークアウト(企業構造改善作業)を申請するなど、不動産プロジェクトファイナンス(PF)の流動性危機まで発生している状況だ。2022年の国内総生産(GDP)で建設投資が占める割合は15%程度であり、建設景気の低迷は冷え切った体感景気をさらに萎縮させる可能性がある。
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