第二次世界大戦中に強制労働させられたとして、韓国人元徴用工が日立造船に損害賠償を求めた訴訟では、先月28日、大法院判決で5000万ウォン(約550万円)の賠償命令が確定した。日立造船は2審で敗訴した直後の2019年1月、韓国内での資産の差し押さえを防ぐ目的で、6000万ウォンを裁判所に供託した。
原告側はこの供託金を賠償金として差し押さえるため、今回、申請を行った。裁判所の判断には数か月かかるとみられる。
元徴用工訴訟問題は長く日韓最大の懸案となってきたが、現金化が迫る中、韓国政府は昨年3月、解決策を発表した。その内容は、元徴用工を支援する韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が、元徴用工らへの賠償を命じられた日本企業に代わって遅延利子を含む賠償金相当額を原告らに支給するというもの。韓国政府がこの解決策を発表した際、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は「これまで政府が、被害者の立場を尊重しながら韓日両国の共同利益と未来発展に符合する方法を模索した結果だ」と強調した。
財団はこれまでに、元徴用工訴訟で勝訴した原告ら15人のうち、生存している原告の1人と10人の遺族への支給を完了した。しかし、残りの原告と遺族の計4人は日本企業による謝罪や賠償を求めて受け取りを拒否している。
元徴用工訴訟では、日本企業の敗訴が相次いでいる。今月11日にも大法院は被告の日本製鉄の上告を棄却。同社に1億ウォンの支払いを命じた2審判決が確定した。
今後も日本企業に賠償を命じる大法院判決が続くことが予想される中、財団による支給の財源が足りなくなる可能性が指摘されている。韓国政府は解決策を発表した際、民間企業から寄付を募り基金を設立して財団が賠償金相当額を支払うとしたが、これまでのところ拠出したのは韓国の鉄鋼大手ポスコのみ。個人による寄付などを合わせても、これまで集まった寄付の総額は41億ウォンあまりにとどまっている。10日に就任したチョ・テヨル外交部長官(外相)は徴用問題の解決策について「韓日関係改善の流れに乗り、日本の民間企業も一緒に船に乗ったつもりで問題を解決していく努力に参加することを期待している」と述べた。
しかし、日本政府は日韓の戦後補償問題に関して、「完全かつ最終的に解決」したことを確認した、1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場だ。
昨年末に日立造船に対する勝訴が確定した原告側が、今回、裁判所に預けられている同社の「供託金」の差し押さえを申請したが、仮に原告側への賠償金として供託金の受け取りが認められれば、日本企業に実害が及び、同協定に反することになる。11日の朝日新聞の報道によると、同社は「現段階でコメントすることはない」としている。一方、韓国外交部の当局者は「供託金については承知している」としたが、「原告が判断する問題であり、具体的なコメントは控えたい」と述べるにとどめた。その上で、昨年3月に発表した、日本企業に代わって韓国政府傘下の財団が賠償金を支払う「第三者弁済」で、引き続き勝訴した原告に賠償金を支給していく方針に変わりがないことを強調した。
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