竹島をめぐって、領有権を主張している韓国は、島に警備隊員を常駐させるなど実効支配を続けている。国会議員らによるパフォーマンス的な行動もみられ。昨年5月には、最大野党「共に民主党」所属の議員が学生団体のメンバーら十数人と竹島に上陸した。議員らは韓国国旗を振り、「独島は我々の領土だ」などと叫んだ。この議員は上陸後、自身のSNSに「独島がわが領土であることを直接立証した」などと投稿した。出演したラジオ番組でも改めて上陸の意図を説明し、「日本は安保文書にも既に竹島が日本の領土だと記述しており、今は外交演説でも主張している。我々も世界の人々に対して独島が韓国の領土だということを知らせなければならないと考え、青年委員(学生団体)らと上陸することを決めた」と語った。
しかし、議員の取った行動には韓国内でも批判が上がった。韓国政府は島の領有権争いの存在そのものを認めておらず、島は明らかに韓国の領土であるという立場から、そもそも外交交渉や司法での解決の対象になるものではないと主張してきている。議員が批判されたのは政府の立場と整合性がとれないためで、現職の国会議員が島に上陸して領有権を主張すれば、竹島が論争の対象であると認めることになるからだ。
また、最近、韓国国防部(部は省に相当)は韓国軍の将兵向けに配布した教材で、島についての記述部分に「領土紛争地域だ」との文言があったとして、教材の全てを回収した。ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領もこうした記述がなされたことに「あってはならないことだ」と激怒したという。
教材には「韓半島(朝鮮半島)周辺では中国、ロシア、日本などの複数の強国が激しく対立している」と前置きした上で、「これらの国は自国の利益のために軍事力を海外に投射したり、釣魚島(日本名・尖閣諸島)、クリール諸島(千島列島)、独島問題など領土紛争も進行中であり、いつでも軍事的衝突が発生する恐れがある」との記述がみられる。前述のように、島の領有権を主張する韓国政府は「領土問題は存在しない」との立場であるため、教材の記述は政府の方針に反するのではないかとの指摘が韓国メディアから上がり、物議を醸した。
島について韓国も日本もそれぞれ「わが国固有の領土」との立場だ。しかし、韓国メディアによると、前出の誠信女子大学のソ・ギョンドク教授がこのほど、ChatGPTに「独島はどこの国の領土ですか」と韓国語で尋ねたところ、「国際的な(領土)紛争地域」と回答。「韓国が統制していますが、日本も主張している地域です」とした。ソ氏は英語や日本語でも同様の質問をしたが、回答は変わらなかったという。ソ氏はChatGPTを開発した米国のOpenAIに対し抗議メールを送り、「ネットユーザーが誤解しないよう、可能な限り早期の是正を要請する」と求めた。
一方、日本では第213通常国会が召集され、30日、上川陽子外相が本会議で外交演説を行った。その中で上川氏は竹島についても言及し、歴史的事実や国際法上も日本固有の領土であるとの基本的な立場に基づいて、毅然とした対応をすると強調した。上川氏の演説に、韓国側は即座に反応。外交部(外務省に相当)は同日、報道官声明を発表し、「不当な領有権主張を繰り返したことに強く抗議する。直ちに撤回することを求める」などとした上で、「日本政府の不当な主張は韓国固有の領土である独島に対するわれわれの主張にいかなる影響も及ぼさないということを改めて明確にする」と表明した。
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