<W解説>サムスントップに無罪判決、「『司法リスク』払いのけた」と韓国メディア
<W解説>サムスントップに無罪判決、「『司法リスク』払いのけた」と韓国メディア
韓国最大の財閥であるサムスングループの経営権の継承をめぐり不正があったとして、資本市場法違反や業務上背任などの罪に問われた、同グループトップのイ・ジェヨン(李在鎔)サムスン電子会長に対し、ソウル中央地裁は今月5日、無罪判決を言い渡した。仮に李氏が有罪となり、収監されればグループ経営への影響が懸念されていたが、無罪判決を勝ち取ったことで、大きな不安要因が解消された。韓国メディアは「今回の判決により、李会長とサムスングループは『司法リスク』を払いのけて企業経営にまい進できるようになった」(中央日報)などと伝えている。

起訴状などによると、李氏はサムスングループ企業の第一毛織とサムスン物産の合併をめぐり、自身がグループの支配力を高めるために不正に合併企業の株価を操作したとして資本市場法違反と業務上背任などの罪に問われた。

5日の判決公判で地裁は、両社の合併は「李会長への経営権継承を唯一の目的でなされたとみる証拠が不足している」とし、合併は李氏の経営権継承や支配力強化だけが目的ではなく、全体的に不当とみなすことはできないと指摘。李氏に無罪(求刑懲役5年、罰金5億ウォン=約5600万円)を言い渡した。共に起訴されたグループ幹部ら13人も全員無罪とした。

聯合ニュースによると、李氏はこの日、公判開始20分前の午後1時40分ごろ地裁に到着。濃いグレーのスーツを着た李氏の表情は硬かったという。法廷では裁判長が判決趣旨を読み上げる間は無表情だったが、判決文の朗読が始まって約50分後、裁判長が被告全員に無罪を言い渡すと、安堵(あんど)したのか、笑みを浮かべたという。しかし、閉廷後、李氏は記者団の取材には応じず、無言で法廷を後にした。李氏側の弁護士は「今回の判決によって(一連の取引は)適法だという点が明確に確認された」とコメントした。

李氏は今回の公判に先立ち、2017年にパク・クネ(朴槿恵)元大統領らへの贈賄容疑で逮捕され、その後、懲役2年6か月の実刑判決を受けて収監された。しかし、2021年8月に仮釈放された後、22年8月15日の光復節(日本による植民地支配からの解放記念日)に合わせた恩赦の対象となり、自由な経済活動が可能になった。同年10月にはサムスン電子の会長に就任した。

この贈収賄スキャンダルに関連するものを含め、数年にわたって法廷闘争に巻き込まれてきた李氏だが、5日の地裁判決で司法リスクは解消へと向かう。

聯合ニュースは韓国経済界の反応を伝えた。関連記事によると、大韓商工会議所は判決を歓迎するとし、「今回の判決は先端産業の主導権を確保するための韓国企業のグローバル競争と今まさに回復に向かっている韓国経済に大きく役立つだろう」と期待した。韓国貿易協会は「グローバル企業サムスンの司法をめぐるリスクが解消され、韓国の輸出と経済活性化に役立つと期待する。半導体需要が回復し、先端産業への投資に対するグローバル競争が激しい現在の環境を勘案すれば判決を幸いに思う」とした。

韓国紙の中央日報は6日付の社説で「捜査と裁判まで5年6か月間のうんざりする攻防で、サムスンは経営の空白を避けられなかった」と指摘。その上で「サムスンは司法リスクを払いのけただけに、コントロールタワーを再整備して未来の新事業確保に向けた買収合併と投資などにスピードを出さなければならない」と主張した。

サムスンの事業環境は厳しく、23年12月期の営業利益は15年ぶりの低水準に落ち込んだ。スマートフォンでは世界首位の座を米アップルに明け渡した。中央日報は「これからはしっかりと『事業リスク』を乗り越える時間だ」と指摘した。

一方、複数の韓国メディアの報道によると、検察は判決を不服として控訴する方針を示唆した。聯合ニュースによると、ソウル中央地検の関係者は7日、一審判決について「検察の主張を全く認めず、弁護側の一方的な主張を採択したのではないかと思う。納得しづらい部分がある」と述べたという。検察は「判決の事実認定と法理判断を分析した上で、控訴するかどうかを決める」としている。控訴の期限は今月13日。

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