与正氏は談話の冒頭、「岸田日本首相が国会の衆議院予算委員会で、日朝間の現状を大胆に変える必要性を強く感じるとしながら、自分自身が朝鮮民主主義人民共和国の国務委員長と主導的に関係を結ぶことが極めて重要であり、現在さまざまなルートを通じて努力し続けていると発言したという」と、今月9日の衆議院予算委員会での岸田首相の発言を紹介。その上で与正氏は「岸田首相の今回の発言が、過去の束縛から大胆に抜け出し、朝日関係を前進させようという真意から出たものであれば、肯定的に評価されない理由はないと思う」とした。さらに「日本が時代錯誤的な敵対意識と、実現不可能な執念を勇気を持って捨て、互いを認めた基礎の上で丁重なふるまいと信義ある行動によって関係改善の新たな活路を切り開いていく政治的判断を下すなら、両国いくらでも新しい未来を共に切り開いていくことができるというのが私の見解だ」とした。
異例な内容の談話だが、北朝鮮はこのところ、日本への対応で、これまでとは違った動きを見せている。金総書記は先月、岸田首相に宛てて能登半島地震を見舞う電報を送った。金総書記は電報で「日本で不幸にも新年初めから地震により多くの人命被害と物質的な損失を被ったという知らせに接し、あなたと遺族、被害者に深い同情と見舞いの意を表する。一日も早く地震の被害から復旧し、安定した生活が回復することを祈る」と記した。北朝鮮の最高指導者が日本の首相に直接電報を送るのは極めて異例で、当時、その意図に関心が集まった。日朝首脳会談の開催を考えていることの表れではないかとの見方を示す専門家もいる。
与正氏は談話の内容について「個人的な見解であり、私は公式に朝日関係を評価する立場にはない」としたが、与正氏はこれまで金総書記の意向を踏まえて度々メッセージを発してきており、金総書記の意向が反映されていると捉えることができる。
与正氏の談話が発表されるや、日本メディアはこぞって伝えた。産経新聞は「北朝鮮は今年に入り、韓国との平和統一路線を放棄し、武力行使も辞さない方針を強調している」とし、「日本への融和姿勢をちらつかせ、日米韓の連携にくさびを打ち込む狙いのありそうだ」と報じた。毎日新聞は、与正氏が談話の中で岸田首相の訪朝の可能性について「拉致問題を両国関係の障害物として捨てるのなら」と条件をつけたことについて、「岸田氏はこれまで、拉致問題の解決に向け、日朝首脳会談の実現に前向きな姿勢を示してきており、同問題を『解決済み』とするのは非現実的だ」と指摘した。
日本政府は拉致問題の打開策が見出せずにいる。拉致被害者は2002年に5人が帰国して以来、一人の帰国も実現していない。岸田首相は先月30日の施政方針演説で、拉致問題について「拉致被害者ご家族が高齢となる中、時間的制約のある拉致問題は、ひと時も揺るがせにできない人道問題だ」と述べ、「政権の最重要課題だ」と強調した。
北朝鮮側から新たに投げられたボールに、日本政府はその位置を慎重に見極めながら情報収集と分析を進める。
林芳正官房長官は16日、「(与正氏が)談話を発出したことには留意している。それ以上の詳細については今後の交渉に影響を及ぼす恐れがあるため、明らかにすることは控えたい」と述べるにとどめた。その上で日朝首脳会談に向けて、「様々なルートで働きかけを絶えず行ってきている」と強調した。一方、与正氏が談話の中で拉致問題について解決済みとしたことについては「まったく受け入れられない」とし、「拉致、核・ミサイルを包括的に解決する方針に変わりはない」と強調した。
一方、北朝鮮側も日本側の今後の出方を見極める姿勢で、与正氏は談話で「今後、岸田首相の本心をさらに見極めなければならないだろう」とした。
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