曺氏は2019年9月に当時の文大統領から法相に任命された。検察改革や既得権益打破などを期待されての抜擢だった。しかし、娘や息子らを名門大学などに不正入学させていた疑惑などが浮上。わずか1か月ほどで辞任に追い込まれた。曺氏にはその後もさまざまな疑惑が持ち上がり、当時、追及しても疑惑が絶えないことから「タマネギ男」とやゆされた。
検察は曺氏を起訴したが、当時、その捜査チームを率いていたのが検事総長だったユン・ソギョル(尹錫悦)現大統領だ。尹氏はパク・クネ(朴槿恵)元大統領や、イ・ミョンバク(李明博)元大統領をめぐる贈収賄事件などを徹底的に捜査した手腕が当時の文大統領に評価され、2019年に検察トップの検事総長に抜てきされた。しかし、曺氏の疑惑を追及したことから文政権と次第に対立するようになり、尹氏は2021年3月に検事総長を辞任した。だが、真っ向から政権と対峙(たいじ)した姿が国民に支持され、政界入りを求める声が高まることとなった。尹氏は大統領選に出馬し、当選。2022年5月、第20代大統領に就任した。
一方、曺氏は娘と息子の不正入学に絡む公文書偽造・同行使罪や業務妨害罪で裁判にかけられた。ソウル高裁は先月8日、懲役2年、追徴金600万ウォン(約67万円)の実刑とした一審判決を支持する判決を言い渡した。曺氏は上告する考えを示している。
その曺氏は先月13日、4月10日の総選挙に向けて新党を結成する意向を表明した。会見を開き、「無能な検察独裁政権を終わらせるため一番前で戦う」と述べた。その後、党名は「祖国革新党」に決定した。「祖国」の韓国語の読み方は「チョグク」で、曺氏の名前と同一だ。曺氏側は当初、党名を曺氏自身の名前をそのまま用いた「曺国新党」としたい意向を示した。しかし、中央選挙管理委員会がこれを認めなかったため、「曺国」を「祖国」に改め、「革新」の言葉も盛り込んだ「祖国革新党」とすることに決まった。
今月3日には立党大会が開かれ、曺氏は「尹錫悦・検察独裁政権を早期に終息させる」と改めて訴えた上で、総選挙での10議席確保することを目標に掲げた。
その「祖国革新党」は、第3勢力と呼ばれる新党の中では、現在、最も多くの支持を集めていることがわかった。聯合ニュースが今月2日から3日にかけて、18歳以上の男女1000人を対象にどの政党に投票するかを尋ねたところ、「祖国革新党」と答えた人は3%で、与党「国民の力」のイ・ジュンソク(李俊錫)氏が結成した「改革新党」(2%)や、最大野党「共に民主党」のイ・ナギョン(李洛淵)元代表が立ち上げた「新しい未来」(1%)を上回った。
こうした中、曺氏は「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表と「反尹(反尹錫悦)戦線」を掲げ、総選挙に向けて連携を強めていくことを決めた。李氏は「今回の総選挙で、尹政権に反対し、審判しようとするすべての政治勢力が力を合わせなければならない。その中には『祖国革新党』も共にいる」と述べた。
しかし、こうした動きには批判も出ている。前述のように曺氏は現在、公判中だ。李氏もまた、ソウル近郊のソンナム(城南)市長時代の都市開発に関連して背任などの罪に問われ裁判にかけられている。韓国紙の朝鮮日報は6日付の社説で、「二人はいずれも党代表で、刑事被告人だ」とし、「そんな人々が両党の代表として対面する場面そのものが、今の韓国野党がどれほど非正常であるかを示している」と指摘。その上で同紙は「2人がどれほど良いことを言っても、結局は選挙を利用して個人の不正に免罪符をもらい、権力を握り続けたいということを意味する」と批判した。
曺氏による「祖国革新党」の立ち上げ、そして曺氏と「共に民主党」の李代表の連携が、4月の総選挙にどのような影響をもたらすのか注目される。
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