日本と北朝鮮の間に飛行機の定期便がないことや、競技運営の観点から不透明な点も多いことから北朝鮮で公式戦を行うことは常に困難が伴う。先月24日のパリ五輪アジア最終予選、日本代表「なでしこジャパン」と北朝鮮代表の第1戦は当初、金日成競技場で開催予定だった。「なでしこジャパン」が平壌に乗り込むとみられていたが、AFC(アジア・サッカー連盟)は、前述した理由で中立地での開催を提案。これに対し北朝鮮は中国での開催を希望したが、中国側の態勢が整わず、調整は難航した。この試合は北朝鮮が「ホーム扱い」のため、代替地の選択権は北朝鮮側にあり、日本は決定を待つしかない状況だったが、直前の先月21日にサウジアラビアのジッダで行われることが決まった。
海外でプレーする日本代表選手たちは、移動の負担を減らすため、日本に戻らず、直接現地入りすることを考えていたというが、開催地が決まらないため、一旦日本に戻った選手もいた。「なでしこジャパン」の主将で、イタリア・ローマでプレーする熊谷紗希選手もその一人だった。熊谷選手は試合会場に急きょ決まったサウジアラビア・ジッダへの出発前の記者会見で「こんなことはあってはならない。オーガナイズする方にも選手たちをベストコンディションで臨ませる責任はある」と苦言を呈した。ジッダでの開催が決まったのは試合の3日前。選手たちは、調整の時間を十分に取れぬまま試合に臨むこととなった。
今月26日には、男子の日本代表がW杯アジア2次予選の北朝鮮とのアウェー戦に臨む。AFCは予定通り平壌で開催する方向で調整していると報じられているが、まだAFCから正式な発表はない。日本協会の宮本恒靖専務理事は7日、「AFCとコミュニケーションを取って、女子のことがあったので、ああいうことがないように、チームにかなりの負担になったので、とにかく早く最終の確認が出るのであれば連絡をしてくれと(AFC)にコミュニケーションは取り続ける。どの場合にも対応できるような体制を常にとっている。男子の試合もどういうことになっても対応できる準備をしている」と話した。
また、森保一監督は9日、記者団に対し「まずは、平壌で試合をすることを今のところは想定してやっている。変わったとしても、決定事項の中で対応するということをやっていければと思う」と話した。一方、森保氏は「これがアジアの中で当たり前のことかもしれないが、国際舞台でチームで多くの人が国をまたいで行き来しなければいけない中で、試合会場等々のスケジュールが決まらないというのは、問題ではあるかなとは思う」と指摘。「試合を決められる方々には考えていただきたいと思う」とAFCなどに対し、改善を求めた。
試合が平壌で行われれば、日本代表にとって2011年11月のブラジルW杯アジア3次予選以来、13年ぶりとなる。キム・ジョンウン(金正恩)総書記の祖父のキム・イルソン(金日成)主席の名を冠した金日成競技場には、当時、約5万人の観衆が集まり、日本代表はブーイングを浴びせられた。過酷なアウェー戦に苦戦し、日本は0-1で敗れている。
韓国メディアは26日の試合が平壌開催となった場合、日本代表が苦戦する展開を予想する。スポーツ・芸能総合サイトのOSENは「日本の選手たちにとって北朝鮮は恐怖の対象だ」とし、「サッカーの実力はともかく、北朝鮮で試合をすること自体が負担になる」とした。SPOTV NEWSは、「日本の立場からすると、同じグループのシリアやミャンマーよりも北朝鮮ははるかに厳しく、情報も少ないので、より繊細なアプローチが必要だと思われる」とした上で「逆に北朝鮮からすれば、恐怖を武器にするに十分だ」と指摘。26日の試合が平壌開催となれば、北朝鮮は21日に東京・国立競技場で行われる試合は最低限引き分けに持ち込み、平壌での試合に全力を結集する戦略を取ると予想した。
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