日本と北朝鮮の間には飛行機の定期便がないことや、競技運営の観点から不透明な点も多いことから北朝鮮で公式戦を行うことは常に困難が伴う。2月の女子パリ五輪アジア最終予選の女子日本代表「なでしこジャパン」と北朝鮮代表の第1戦は当初、北朝鮮の首都・ピョンヤン(平壌)にあるキム・イルソン(金日成)競技場で開催予定だった。「なでしこジャパン」が平壌に乗り込むとみられていたが、AFC(アジア・サッカー連盟)は、前述した理由で中立地での開催を提案。これに対し、北朝鮮は中国での開催を希望したが、中国側の態勢が整わず、調整は難航した。この試合は北朝鮮が「ホーム扱い」であるため、代替地の選択権は北朝鮮側にあり、日本は決定を待つしかない状況だった。その後、サウジアラビアのジッダでの中立地開催が決まったのは試合の3日前だった。
一方、結局中止が決まったW杯アジア2次予選のアウェー北朝鮮戦も、北朝鮮で開催なのか、それとも中立地なのか、なかなか決まらない状況が続き、関係者をやきもきさせた。アジア・サッカー連盟(AFC)が3月上旬に視察団を平壌に派遣し、キム・イルソン(金日成)競技場などを調査した。
その後、日本協会は今月11日、AFCからの報告を受け、「予定通り平壌で開催する」と発表した。これを受け、チームはもちろん、報道関係者もビザの手配など準備を進め、さらに日本政府は不測の事態に備えて政府職員を現地に派遣させることを決めていた。
しかし、北朝鮮側は20日にAFCに対し「やむをえない事情で試合を中立地に変更する必要がある」などとして、自国開催を取りやめる意向を伝達。AFCと国際サッカー連盟(FIFA)が協議した結果、中立地での開催も見送り、22日、日本サッカー協会は中止を正式に発表した。
北朝鮮側が試合の平壌開催に難色を示した理由は、日本で報告数が増えている「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」を警戒した防疫上の措置とみられている。21日付の北朝鮮の朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は「日本では最近、死亡率の高い『悪性伝染病』が急速に拡散している」と報じていた。
中止の決定を受け、日本代表は解散。3月の活動を終えた。森保一監督は「昨日の試合において気になった点や改善点を修正する機会がなくなったことと、次の試合でより多くの選手を起用できなくなったことは残念に思います」などとした上で、日本代表の活動は今後も続きますし、これまでの積み上げをベースにチームとしてさらなる向上を目指します」とコメントした。
平壌開催でようやく落ち着き、各方面で準備が進められていた中、北朝鮮側が突然ドタキャンするという前代未聞の事態に、中止を伝えるネット記事についたコメントでは、「『なでしこ』の時もぎりぎりまで曖昧で調整に時間がかかった。このような国の参加を認めること自体、スポーツとして成り立たない」「散々振り回した北朝鮮にはそれ相応のペナルティが科せられないと納得がいかん」などと怒りや処分を求める声が多数上がっている。また、「北はホームで負けることを恐れたってことはないの?」と疑うコメントも上がっている。韓国メディアも北朝鮮の身勝手さを批判しており、InterFootballは「大会の運営日程を協議なしに自分たちで勝手に変えるという茶番を演じている。何から何まで驚くほど非常識だ」と非難した。
国際サッカー連盟(FIFA)は23日、「この試合の開催および日程変更はない」と正式に発表した。没収試合となる公算が大きく、その場合、規定で日本が3-0の不戦勝となり、日本代表は6月の2試合を残し、9月から始まるアジア最終予選への進出が決定する。
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