二階氏は25日、党本部で記者会見を開き、「派閥の政治資金問題をめぐり、政治不信を招く要因となったことに対し、改めて国民に深くおわびを申し上げる」と陳謝。その上で、「この際、自らの政治的責任を明らかにする」とし、岸田文雄首相に対し、「次期衆院選挙に出馬しないということを伝えた」と述べた。
二階氏をめぐっては、秘書が二階派からのパーティー収入計3526万円を資金管理団体の政治資金収支報告書に収入として記載しなかったとして政治資金規正法違反で略式起訴され、有罪が確定した。二階派の元会計責任者はパーティー収入など計約2億6400万円の収入を派閥の収支報告書に記載しなかったとして在宅起訴された。
25日の会見で二階氏はこの点にも触れ、「既に派閥の元会計責任者と私の秘書が刑事処分を受けているが、その政治責任は全て監督責任者である私自身の責任にある」と強調した。裏金事件に関する党の処分が決まる前に身を引いた形で、政治資金パーティー裏金事件の責任が指摘されている安倍派幹部の処分に影響する可能性も指摘されている。
二階氏は衆院和歌山3区選出で、当選13回。安倍、菅両政権で約5年間にわたって歴代最長の幹事長を務めた。
二階氏が次期衆院選への不出馬を表明したことは、朝鮮日報など韓国メディアも相次いで報じた。二階氏は日韓関係の修復に尽力した経緯があり、韓国では親韓派の有力議員と認知されている。
朝鮮日報は27日掲載の記事で、「二階氏は90年代末に運輸大臣を務める中で韓国と接近し始めた」と紹介。2001年のインチョン(仁川)国際空港の開業に伴い、キンポ(金浦)空港の国際線の運航が当時中断した後、金浦~羽田路線の開発に先頭に立ったとし、「キム・デジュン(金大中)政権の実力者だったパク・チウォン(朴智元)大統領府秘書室長と意気投合し、最終的に金浦~羽田間に飛行機を飛ばすことに寄与した。この路線は過去20年間でおよそ3000万人を運び、韓日関係の中枢の役割を果たしている」と解説した。
2017年5月、慰安婦問題をめぐる日韓合意に批判的なムン・ジェイン(文在寅)氏が大統領に就任し、翌月、二階氏は当時の安倍晋三首相の特使として訪韓。文氏と会談した。二階氏は文氏に対し、「韓国の繁栄、日本の繁栄のために両国の心ある政治家は、協力し合わなければならない」と語ったが、訪韓中の発言が波紋を広げた。二階氏は南西部のモッポ(木浦)を訪れ、韓国の議員らと会合した際、日韓の関係改善を妨げる動きについて「一握りの悪だくみをする連中を見つけたら撲滅しましょう」と発言。「悪だくみをする連中」という表現が慰安婦問題をめぐる日韓合意の再交渉を主張する勢力を指しているのではとの指摘が出され、日韓関係の足かせになるとして韓国・外交部(外務省に相当)は当時、日本側に注意を促した。
文政権が誕生してから、一段と冷え込みが強まった日韓関係を憂慮してか、2019年9月、二階氏は民放の番組で「我々は大人になり、韓国の言い分も聞く度量がないとダメだ。円満な外交を展開できるように、韓国の努力も必要だが、まず日本が手を差し伸べて譲歩できるところは譲歩すべきだ」と述べた。この発言は当時、韓国メディアも驚きを持って伝え、東亜日報は「安倍政権の核心人物の二階氏が韓国に対する譲歩に言及したのは異例だ」とした。
2021年7月、二階氏は韓国の超党派の国会議員でつくる韓日議員連盟の幹部に対し、東京五輪に合わせた文大統領の訪日実現に協力を要請。しかし、訪日は実現せず、二階氏は当時、残念な思いを口にした。
2022年5月にユン・ソギョル(尹錫悦)政権が発足して以降、日韓関係は劇的に改善し、現在は政界のみならず財界、そして民間同士の活発な交流が進められている。しかし、日韓の間には依然、解決すべき問題が数多く残っている。朝鮮日報は、二階氏が次期衆院選への不出馬を表明したことを伝える前出の記事で、「今後、日本の政治家の中で誰が二階氏のような役割を果たせるか、わからない」とする韓国の外交官のコメントを紹介した。
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