今回の総選挙は尹政権の「中間評価」と位置付けられた。小選挙区(254議席)、比例代表(46議席)で争われた。改選前は野党「共に民主党」が156議席(系列政党を含む)、与党「国民の力」が114議席(同)で、野党が国会の議席の過半数を占める「ねじれ」状態で、今回の総選挙はこの状態が解消されるかが焦点だった。
10日に投開票が行われ、前述のように与党が大敗する結果となった。野党勢力は、憲法改正案や大統領の弾劾を求める議案を可決できる200議席には届かなかったが、引き続き、政局の主導権を握ることができる。
「国民の力」トップのハン・ドンフン(韓東勲)非常対策委員長は「民意は常に正しい。国民から選ばれるに足りなかったわが党を代表して国民におわびする」と謝罪。民意を重く受け止め、深く反省するとして委員長の辞任を表明した。また、ハン・ドクス首相のほか、国家安保室を除く首席秘書官級以上の大統領室高官も全員辞意を表明した。尹大統領もコメントを発表し、「総選挙での国民の意思を謙虚に受け止め、国政を刷新し、経済と国民の生活安定に向け最善を尽くす」とした。一方、「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表は今回の大勝について「党への支持と声援に心から感謝申し上げる」とした上で、「党の勝利ではなく、わが国民の偉大な勝利」と述べた。当選者に向けては「選挙後も常に謙虚な姿勢で、主権者の声に耳を傾けなければならない」と呼び掛けた。
今回の総選挙について、韓国の聯合ニュースは「22年6月の統一地方選では与党が圧勝したが、尹政権に対する中間評価と位置付けられる今回の選挙での国民の反応は冷ややかだった」とした上で、「任期を3年残す尹大統領は今後の国政運営方式の再設定が避けられないとみられる」と伝えた。朝鮮日報は「尹政権が掲げる労働改革、教育改革、年金改革はもちろん、医師増員などの医療改革も今後更に難しくなる見通しだ」と報じた。中央日報は11日の社説で、「共に民主党」に言及。「民主党の大勝は尹政権の失政に物申したいという国民の審判欲求が原動力だ。言い換えれば民主党が圧勝を収めたのは普段の自分たちの国会活動に対して評価を得たというよりは、政権審判論に伴う反射利益をとてつもなく享受したとみるのが正確だ」と指摘。「そのため民主党は今回の選挙結果に浮き足立ったり、うぬぼれたりしてはならない」とした。その上で「国の安定と発展に向け、勝者である民主党の李代表は、尹政権を助ける時は助け、協力する時は協力する姿勢を見せることが望ましい」と促した。
今回の総選挙では、対日外交は主要な争点にはならなかった。しかし、尹政権下での対日関係改善を支えた重鎮らが相次いで敗れた。日本との議員外交を担う韓日議員連盟のチョン・ジンソク会長はその一人で、6選を目指したが敗れた。チョン氏は2022年の尹政権発足直後に同連盟の会長に就任した。チョン氏の落選に伴い、新たな会長が選ばれる見通しだ。前外相のパク・チン(朴振)氏も及ばなかった。朴氏は日韓最大の懸案とされてきた元徴用工訴訟問題で、昨年3月に解決策を発表した。日米韓3か国の連携強化にも尽力した。今回、5回目の当選を目指したが敗北した。
知日派重鎮が相次いで敗れる結果に、日本メディアは「今後の日韓関係にも影を落としそうだ」(産経新聞)、「尹大統領の求心力の低下は避けられず、日韓関係改善の動きが停滞する恐れもある」(フジテレビ)、「日韓関係への影響は限定的とみられるが、韓国政府が関係改善に取り組む上で火種は残っている」(日経新聞)などと報じている。
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