今回の総選挙は尹政権の「中間評価」と位置付けられた。小選挙区(254議席)、比例代表(46議席)で争われた。改選前は野党「共に民主党」が156議席(系列政党を含む)、与党「国民の力」が114議席(同)で、野党が国会の議席の過半数を占める「ねじれ」状態で、今回の総選挙はこの状態が解消されるかが焦点だった。
10日に投開票が行われ、最大野党「共に民主党」は系列の比例政党を含めて175議席を獲得。尹大統領を支える与党「国民の力」と系列政党は108議席と大敗した。野党勢力は、曺氏率いる「祖国革新党」の12議席を加えても、憲法改正案や大統領の弾劾を求める議案を可決できる200議席には届かなかったが、引き続き、政局の主導権を握ることができる。
「国民の力」トップだったハン・ドンフン(韓東勲)非常対策委員長は、選挙後、「民意は常に正しい。国民から選ばれるに足りなかったわが党を代表して国民におわびする」と謝罪。大敗した責任を取り、委員長職を辞任した。尹大統領もコメントを発表し、「総選挙での国民の意思を謙虚に受け止め、国政を刷新し、経済と国民の生活安定に向け最善を尽くす」とした。一方、「共に民主党」の李在代表は今回の大勝について「党への支持と声援に心から感謝申し上げる」とした上で、「党の勝利ではなく、わが国民の偉大な勝利」と述べた。
今回の総選挙で、一気に第3政党に浮上したのが曺氏率いる「祖国革新党」だ。曺氏は「無能な検察独裁政権を終わらせるため一番前で戦う」とし、今年3月、同党を結成。総選挙で10議席獲得することを目標に掲げ、選挙戦に臨んだ。党名に採用した「祖国」の韓国語の読み方は「チョグク」で、曺氏の名前と同一だ。曺氏側は当初、党名を曺氏自身の名前をそのまま用いた「曺国新党」としたい意向を示した。しかし、中央選挙管理委員会がこれを認めなかったため、「曺国」を「祖国」に改め、「革新」の言葉も盛り込んだ「祖国革新党」とすることに決まった。
同党は、尹政権や最大野党に不満を持つ層をうまくつかみ、急速に支持を拡大。総選挙で「台風の目」となり、事前の大方の予想を上回る12議席を獲得した。韓国メディアは旋風を巻き起こした同党に注目。「今後、『祖国革新党』は『共に民主党』と『協力的競争』の構図を形成し、対政府・対与党強硬路線を取る一方、確実にキャスティングボードを握る可能性が高い」(ハンギョレ新聞)などと伝えている。
同党を率いる曺氏は、文前政権時代の2019年9月、文大統領(当時)から法相に任命された。検察改革や既得権益打破などを期待されての抜擢だった。しかし、娘や息子らを名門大学などに不正入学させていた疑惑などが浮上。わずか1か月ほどで辞任に追い込まれた。曺氏にはその後もさまざまな疑惑が持ち上がり、当時、追及しても疑惑が絶えないことから「タマネギ男」と揶揄された。
検察は曺氏を起訴したが、その捜査チームを率いていたのが当時、検事総長だった尹氏だ。曺氏は娘と息子の不正入学に絡む公文書偽造・同行使罪や業務妨害罪で裁判にかけられ、ソウル高裁は今年2月、曺氏を懲役2年、追徴金600万ウォン(約67万円)の実刑とした一審判決を支持する判決を言い渡した。曺氏は上告し、大法院(最高裁)判決を控えている。
一方、前述のように、今回の総選挙では曺氏が立ち上げた新党が目標を上回る議席を獲得。曺氏自身も当選を果たした。
与党が大敗した中、最大野党「共に民主党」の李代表は、尹大統領に対しトップ会談に応じるよう求めているが、曺氏もまた尹大統領に会談を提案した。曺氏は14日、自身のSNSに「第3政党の代表である私はいつ、どんな形式ででも尹大統領に会うことを希望している」などと投稿した。尹大統領は「国政刷新」に努める姿勢を示しているが、難局を打開するためには、野党との「協治(協力の政治)」が不可欠だ。与党の一部からも党首会談が必要との声が上がっており、因縁深い2人が今後対面することになるのか注目される。
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