<W解説>韓国・尹大統領の支持率が就任後最低、今こそ求められる「協治」の姿勢
<W解説>韓国・尹大統領の支持率が就任後最低、今こそ求められる「協治」の姿勢
今月10日に投開票された韓国総選挙で与党が大敗した中、世論調査会社、韓国ギャラップによると、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の支持率が23%となり、就任後、最低を更新した。韓国紙のハンギョレは「与党内では危機感が広がっており、尹大統領に国政運営の基調や態度の変化を求める声が噴出している」と報じた。一方、今回の世論調査では、次期指導者として誰がふさわしいかも尋ねており、トップは最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表だった。尹大統領と李代表は今週にも初の党首会談を行うものとみられている。

尹政権の「中間評価」と位置付けられた10日の総選挙は、小選挙区(254議席)、比例代表(46議席)で争われた。改選前は野党「共に民主党」が156議席(系列政党を含む)、与党「国民の力」が114議席(同)で、野党が国会の議席の過半数を占める「ねじれ」状態となっており、総選挙でこの状態が解消されるかが焦点だった。

開票の結果、「国民の力」(系列政党を含む)が108議席、「共に民主党」が175議席(同党が主導する野党陣営の比例政党を含む)を獲得。尹大統領を支える「国民の力」が大敗する結果となった。野党勢力は、憲法改正案や大統領の弾劾を求める議案を可決できる200議席には届かなかったが、引き続き、政局の主導権を握ることができる。

「国民の力」は大敗した責任を取り、党トップのハン・ドンフン(韓東勲)非常対策委員長のほか、ハン・ドクス首相、それに国家安保室を除く首席秘書官級以上の大統領室高官が全員辞意を表明した。

尹大統領は16日に開かれた閣議で、総選挙での与党大敗について言及。「今回の総選挙で明らかになった民意を皆が謙虚に受け止めなければならない。より低姿勢かつ柔軟な態度で、より密にコミュニケーションを取り、私から民意に耳を傾ける」と述べた。また、大統領に就任してからの2年を振り返り、「国民だけを見て国益のための道を歩んできたが、国民の期待に及ばなかった。正しい国政の方向を定め、実践するために最善を尽くしたにも関わらず、国民が体感できるほどの変化をつくるまでには及ばなかった」と反省を口にした。

19日、世論調査会社の韓国ギャラップが世論調査の結果を発表し、それによると、尹大統領の支持率は前回調査(3月26~28日)より11ポイント下がって23%となり、就任後最低を更新した。これまでの最低支持率は2022年8月の24%だった。不支持の理由として最も多かったのは「経済・暮らし・物価」の項目(18%)で、「コミュニケーション不足」(17%)、「独断的・一方的」(10%)などと続いた。

政党支持率は「国民の力」が前回調査から7ポイント下がって30%、「共に民主党」は2ポイント上がって31%だった。「国民の力」の支持率は尹政権発足後、最低を記録した。調査は全国の18歳以上の1000人を対象に16~18日に実施された。

今回の世論調査結果について、大統領室は言及を控えているが、韓国紙のハンギョレによると、大統領室の関係者は同紙の取材に「国民の意思をよく汲み取り、国政運営に民意をうまく反映できるよう努める」と述べたという。また、ヨンイン(龍仁)大学のチェ・チャンニョル特任教授は同紙に対し「支持率が20%台に下がったことは、レームダック(死に体)が早めに来たとみなければならない。尹大統領が変わらなければ、さらに下落する可能性もある」と話した。

世論調査の結果にも表れているように、尹大統領は野党とのコミュニケーション不足や独断的・一方的な姿勢が批判されている。こうした中、今週にも開かれる見通しの、最大野党「共に民主党」の李代表との党首会談は、「協治」(協力する政治)を進めていく姿勢を行動で示す機会となりそうだ。李代表は2022年8月に代表に就任して以来、尹大統領に対し、繰り返し党首会談を提案してきたが、尹大統領が応じず、一度も実現していない。しかし、19日、尹大統領は李代表に電話を掛け、「(大統領府のある)ヨンサン(龍山)で会おう」と話したという。尹大統領は「今後は頻繁に会い、国政を議論しよう」とも持ち掛け、これに対し李代表は「我々も大統領の仕事の助けにならなければならない」と話したという。

韓国紙の朝鮮日報は20日付の社説で、「遅きに失した感はあるが、2人の対面が実現するのは幸いなことだ」と評価。総選挙での与党大敗を受け、尹大統領が「より謙虚かつ柔軟な態度を持って意思疎通を進めたい」と話しているとして、同紙は「順調にいけば尹大統領に対する『傲慢』『コミュニケーション不足』との評価もある程度改善されるかもしれない」と期待した。

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