<W解説>韓国・与党トップを退いたハン・ドンフン氏、「国民目線」をモットーとする人物の今後は?
<W解説>韓国・与党トップを退いたハン・ドンフン氏、「国民目線」をモットーとする人物の今後は?
韓国の聯合ニュースが今月22日に報じたところによると、10日の韓国総選挙で、与党「国民の力」が大敗した責任を取って同党トップの非常対策委員長を辞任したハン・ドンフン(韓東勲)氏がユン・ソギョル(尹錫悦)大統領と距離を置き、独自の道を模索しているとの見方が党内で広がっている。韓氏と尹大統領はこれまでも意見の対立が指摘され、今年1月には大統領室が、韓氏の辞任を求めたこともあった。総選挙後、尹大統領は選挙活動をねぎらうため、韓氏らを昼食会に招待した。しかし、韓氏は健康上の理由から応じなかったという。この一件を報じた聯合は「総選挙の期間中に明るみに出た尹大統領との微妙な関係が改めて露呈したとの見方が出ている」と報じた。

韓氏はソウル市出身で、ソウル大学在学中に司法試験に合格し、その後、検事となった。2003年に起きた財閥SKグループの系列会社の粉飾会計事件や、2016年に表面化したパク・クネ(朴槿恵)政権下での国政介入事件など、数々の大型事件を担当した。大検察庁(最高検)検事長など検察で要職を務めた「エリート検事」。尹大統領も検事出身で、韓氏は尹大統領の検察時代からの最側近とされる。保守層から人気が高く、将来の大統領候補として期待する声もある。

与党「国民の力」は昨年12月、党の支持率低迷などを受けて辞任した前代表の後任として、同党トップの非常対策委員会の委員長に韓氏を指名した。当時、総選挙を控える中、党としては大衆的にも人気がある韓氏を党トップに起用することで若い世代や無党派層の支持拡大を図り、勝利につなげたい考えだった。当時、韓氏は「庶民と弱者の側に立ち、この国の未来に備えたい」と意欲を語っていた。

大きな期待を背負って党トップに就任した韓氏だったが、大統領室は今年1月、韓氏の辞任を要求した。尹大統領夫人のキム・ゴンヒ(金建希)氏が、法律で定められている額を超える贈答品を受け取ったとされる疑惑への対応をめぐって、尹大統領と韓氏との意見の対立が背景にあるとの見方が広がった。

この疑惑は金氏が在米韓国人の牧師から高級ブランドバッグを受け取ったとされる場面の隠しカメラの映像が公開されて浮上した。韓国では公務員やその配偶者が職務と関連して一定額以上の金品を受け取ることを禁じる「不正請託防止法」があり、同法違反の疑いが指摘された。

金氏をめぐる疑惑に大統領室は、金氏は「おとり取材」の被害者であり、疑惑に対する釈明や謝罪は不要との立場を示した。一方、「国民の力」内部からは金氏は謝罪すべきとの声が上がり、韓氏はこれに加勢する形で、「国民が心配するような部分があったと思う」と発言。「国民目線」で対応する考えを示した。

大統領室は韓氏の対応に不快感を示し、大統領秘書室長が韓氏に辞任を迫った。これに対し、韓氏は「やるべきことをやる」「私の任期は総選挙後まで続く」と話し、辞任を拒否した。一連のゴタゴタ劇が総選挙に与える影響が懸念されたが、韓氏が「国民目線で対処する」として金氏側をかばわなかったことは、与党の支持率上昇につながった。

しかし、総選挙では与党は大敗し、韓氏は「民意は常に正しい。国民から選ばれるに足りなかったわが党を代表して国民におわびする」と謝罪。非常対策委員長を辞任した。

韓氏は、今月20日にはSNSを更新し、「私は何があっても皆さんを、国民を裏切らない」などと金氏の疑惑をめぐる発言の際と同様、「国民」を強調した文を投稿。これに、聯合ニュースは「政治的に独自の道を歩む意思を示したものとみられる」と指摘した。

韓氏の今後に注目が集まる中、前述のように、韓氏が健康上の理由としてはいるものの、尹大統領の昼食会の招きに応じなかったことも憶測を呼んでいる。聯合は「党内では、韓氏が大統領室と距離を置いた状態で充電期間を持つとの見方が出ており、復帰の時期については党代表を決める党大会よりも後にすべきだとの意見もある」とし、「韓氏が今回、党代表選に挑戦しなければ、復帰は2027年の大統領選への出馬に絡んだものになるとみられる」と報じた。

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