先月10日、韓国では総選挙が行われた。2022年5月に発足したユン・ソギョル(尹錫悦)政権の「中間評価」と位置付けられ、小選挙区(254議席)、比例代表(46議席)で争われた。改選前は最大野党「共に民主党」が156議席(系列政党を含む)、与党「国民の力」が114議席(同)と、野党が国会の議席の過半数を占める「ねじれ」状態で、先月の総選挙はこの状態が解消されるかが焦点だった。
開票の結果、「国民の力」が108議席、「共に民主党」が175議席を獲得、尹大統領を支える「国民の力」が大敗する結果となった。野党勢力は、憲法改正案や大統領の弾劾を求める議案を可決できる200議席には届かなかったが、引き続き、政局の主導権を握る。
「国民の力」は党の支持率低迷などの責任を取り、前代表が辞任したことを受けて代表を置かない非常対策委員会体制に転換。昨年12月、同委員会の委員長に、尹大統領の検察時代からの最側近とされるハン・ドンフン(韓東勲)氏を任命した。当時、同党は総選挙を見据え、大衆的にも人気がある韓氏を党トップに起用することで若い世代や無党派層の支持拡大を図り、勝利につなげようとした。
しかし、前述したように総選挙で「国民の力」は大敗。韓氏は「民意は常に正しい。国民から選ばれるに足りなかったわが党を代表して国民におわびする」と謝罪し、総選挙翌日の先月11日、委員長を引責辞任した。
党の立て直しが急がれる中、党は先月29日、新しい非常対策委員長に黄祐呂氏を指名した。黄氏はソウル近郊のキョンギド(京畿道)カンファド(江華島)出身の76歳。裁判官出身で、1996年に政界入りし、パク・クネ(朴槿恵)政権では「国民の力」の前身の与党「セヌリ党」の代表や社会副総理兼教育部長官(教育相)、韓日議員連盟の会長などを務めた。2013年1月には同連盟会長として当時の安倍晋三首相を表敬訪問。「歴史を直視しつつ、未来志向で信頼関係を築いていきたい」と日韓の関係構築に意欲を見せたが、2015年4月にインドネシアで開かれたアジア・アフリカ会議に韓国政府代表として出席した際には、基調演説で「北東アジアに歴史修正主義が国家間の不審と緊張を誘発している。歴史問題が克服されず、和解と協力を阻害している」と述べた。「日本」と具体的に言及しなかったが、当時、この発言を伝えた韓国メディアは「発言は最近の歴史問題に関連し、日本に向けたものと思われる」と指摘した。
黄氏は2日に開かれる非常対策委員長に正式に任命されれば、6月に開催予定の党大会での新執行部選出に向けた実務を進めることになる。韓国紙の東亜日報によると、非常対策委員長に黄氏を指名したことを発表した党代表代行のユン・ジェオク(尹在玉)院内代表は、黄氏について「公正に党を管理できる人だ」と話しているというが、同紙は「党内の重鎮議員らが相次いで固辞したため、党の元老に助けを求めたのだ」と解説した。黄氏は2016年に国会議員を引退し、現在は党の常任顧問を務めている。
総選挙で大敗した同党は党の刷新を迫られており、党内からは「黄氏は困難な時こそ必要な人」との声が出ている一方、「刷新とは程遠い人事」との批判も上がっている。
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