先月15日、北朝鮮は1994年に死去した金主席の生誕記念日を迎えた。北朝鮮は、「建国の父」とされる金主席の誕生日に当たるこの日を、「最も重要な祝日」としている。今年も首都・ピョヤン(平壌)では前夜から花火が打ち上げられたほか、学生らによる大規模な祝賀行事が開かれるなど、祝いムードに包まれた。
生誕記念日を前に、海外からも約20の親北朝鮮団体が訪朝した。記念して開かれた「チュチェ(主体)思想国際討論会」にはモンゴルやタイ、ネパール、ドイツ、スイス、ブルガリア、チェコ、ブラジルなど各国からの代表団が出席した。新型コロナウイルスの流行以降、北朝鮮がこれほど多くの国から外国人を入国させたのは初めてのことだった。
その生誕記念日から半月が経った今月1日、朝鮮中央通信など北朝鮮メディアは記念日にメッセージを送ってきた国を紹介する記事を掲載した。しかし、韓国の聯合ニュースによると、その記事に北朝鮮の伝統的な友好国であるキューバへの言及がなかった。聯合は、キューバが今年2月に韓国と国交を樹立したことに北朝鮮が不満を表したものとの見方を伝えている。
共産主義国であるキューバは北朝鮮との関係が親密なことで知られている。北朝鮮とは1960年に外交関係を結んだ。キューバを50年近く支配してきたカストロ議長が2016年に死去した際には、キム・ジョンウン(金正恩)総書記が弔電を送った。昨年9月には、米ワシントンにある在米キューバ大使館に火炎瓶が投げ込まれる事件があり、北朝鮮外務省は翌月、攻撃は米国の卑劣な反キューバ的意図によるもので、キューバに対する「テロ攻撃」を米国が黙認していると批判。「反米」でキューバとの連帯を改めて示した。また、今年1月1日には金総書記はディアスカネル大統領に、キューバ革命から65年に合わせた祝電を送り、「社会主義勝利のための共同闘争で結ばれた両国の友好協力関係が今後も強化、発展することを確信する」と述べた。
一方、韓国はキューバとは1995年のキューバ革命を機に断交、交流が途絶えた。韓国にとって中南米諸国の中で唯一、国交がない国だったが、韓国政府は昨年6月にキューバで豪雨による大規模な被害が発生した際、30万ドル規模の人道支援を表明するなど、関係改善を進める姿勢を示していた。
そして、今年2月、韓国外交部(外務省に相当)は、キューバと国交関係の樹立で合意したと発表した。外交部は声明で「中南米外交強化の重要な転換点だ」と指摘。ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が掲げる「グローバル中枢国家」としての「外交の地平を拡張する」と強調し、「両国の経済協力拡大や韓国企業の進出支援の制度的基盤を構築する」と説明した。
韓国は北朝鮮と関係が深いキューバと国交を樹立したことで、北朝鮮の外交基盤の切り崩しを図った形となったが、北朝鮮の反発も予想された。
一方、聯合ニュースによると、キューバは金主席の生誕記念日に、SNSを通じて祝いのメッセージを贈った。外交ルートを通じても祝電などを届けたとみられるという。しかし、前述のように、北朝鮮メディアは、金主席の生誕記念日にメッセージを送ってきた国を紹介する記事でキューバに言及しなかった。聯合ニュースは「意図的なものである可能性が高い」と指摘している。キューバが韓国に接近することに北朝鮮が不満を持っていることが浮き彫りとなった形で、今後、北朝鮮と「兄弟国」キューバとの関係が変わることになるのか注目される。
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