一院制の韓国国会(定数300)の議員を4年に1度選ぶ韓国総選挙は4月10日に行われた。2022年5月に発足したユン・ソギョル(尹錫悦)政権の「中間評価」と位置付けられ、小選挙区(254議席)、比例代表(46議席)で争われた。改選前は野党「共に民主党」が156議席(系列政党を含む)、与党「国民の力」が114議席(同)で、野党が国会の議席の過半数を占める「ねじれ」状態となっていた中、今回の総選挙はこの状態が解消されるかが焦点だった。開票の結果、「共に民主党」は系列の比例政党を含めて175議席を獲得した一方、尹政権を支える与党「国民の力」と系列政党は108議席にとどまり大敗した。野党勢力は、憲法改正案や大統領の弾劾を求める議案を可決できる200議席には届かなかったものの、引き続き、政局の主導権を握ることができることとなった。選挙後、「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表は、大勝について「党への支持と声援に心から感謝申し上げる」とした上で、「党の勝利ではなく、わが国民の偉大な勝利」と述べた。また、与党大敗の結果に、当時の韓国メディアは「任期を3年残す尹大統領は今後の国政運営方式の再設定が避けられないとみられる」(聯合ニュース)などと伝えた。
総選挙前の議席のもとでの第21代国会は先月29日に閉会した。韓国紙の朝鮮日報によると、第21代国会では、2万5855件の法案が発議されたが、このうち処理されたのは9467件にとどまった。法案処理率は36.6%で、第20代国会の37.8%を下回った。尹大統領による、法案への拒否権(再議要求権)行使も目立った。韓国大統領には国会で議決された法案に対し異議がある場合、特定期間内に再議を請求できる権限、すなわち拒否権を持つと、憲法第53条で規定されている。拒否権が行使された法案が再可決されるためには、在籍議員の過半数の出席と、出席議員の3分の2以上の賛成が必要となる。
尹大統領は就任以来、拒否権行使を繰り返しており、こうした対応は自身の支持率低下の一要因にもなっていると指摘されている。昨年の水害で、行方不明者を捜索中だった海兵隊員が殉職した事故をめぐって捜査に圧力がかけられた疑惑があり、「共に民主党」はこの疑惑を政府から独立した特別検察官に捜査させる法案(特別検事任命法、特検法)を国会に提出。先月2日に同党が強行採決し可決したが、尹大統領はこの法案にも拒否権を行使した。韓大統領室側は、既に警察や高官犯罪捜査庁が当時の事故対応を調査中だとして「捜査が不十分な時にのみ適用すべき特別検察官制度の趣旨に合わない」と拒否理由を説明したが、この法律が施行されれば、尹大統領や大統領室の中枢まで捜査対象となる可能性があるため、拒否権行使はそれを避けるためとの見方も出た。
尹大統領の拒否権行使で国会に差し戻されていた同法案は、先月28日の国会本会議で再採決が行われたが、投票総数294票のうち賛成票は179票で3分の2を超えず、否決された。これで、尹大統領が拒否権を行使した10本の法案のうち、国会に差し戻されて廃案となった法案は9本となった。
先月30日から第22代国会の任期がスタートした。前述のように、4月の総選挙の結果を受けて、与党「国民の力」108議席、野党勢力は192議席の構図のもとで運営される。少数与党の「国民の力」としては今後も法整備に苦慮することは必至だ。野党が推し進める法案には大統領の拒否権を通じて対応する構えだが、韓国紙のハンギョレは「国民の力」の議席が前国会での114議席から今国会では108議席に減ったことから、「与党で8人が心変わりするだけで、尹大統領の拒否権は無力化される。定数300人のうち3分の2の200人が団結すれば、大統領が拒否権を行使した法案も可決させることができるからだ」と指摘した。
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