韓国では4月10日、国会(定数300)の議員を4年に1度選ぶ総選挙が行われた。2022年5月に発足したユン・ソギョル(尹錫悦)政権の「中間評価」と位置付けられ、小選挙区(254議席)、比例代表(46議席)で争われた。改選前は野党「共に民主党」が156議席(系列政党を含む)、与党「国民の力」が114議席(同)で、野党が国会の議席の過半数を占める「ねじれ」状態となっていた中、今回の総選挙はこの状態が解消されるかが焦点だった。
開票の結果、「共に民主党」は系列の比例政党を含めて175議席を獲得した。一方、尹政権を支える与党「国民の力」と系列政党は108議席にとどまり大敗した。野党勢力は、憲法改正案や大統領の弾劾を求める議案を可決できる200議席には届かなかったものの、引き続き、政局の主導権を握ることができることとなった。
選挙結果を受けて「国民の力」のトップだったハン・ドンフン非常対策委員長(当時)は、「民意は常に正しい。国民から選ばれるに足りなかったわが党を代表して国民におわびする」と謝罪し、総選挙翌日に委員長を引責辞任した。一方、「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表は、大勝について「党への支持と声援に心から感謝申し上げる」とした上で、「党の勝利ではなく、わが国民の偉大な勝利」と述べた。与党大敗の結果に、韓国メディアは当時、「任期を3年残す尹大統領は今後の国政運営方式の再設定が避けられないとみられる」(聯合ニュース)などと伝えた。
新たな国会(第22代)が開会するのを前に、「共に民主党」は先月16日、第22代国会の前半期議長の候補に、ウ・ウォンシク氏を選出した。国会議長は第1党から出すのが慣例となっている。大方の見方では、ムン・ジェイン(文在寅)前政権で法相を務めたチュ・ミエ氏が有力視されていたが、選出されたのはウ氏だった。この波乱に聯合ニュースは「大どんでん返し」と報じた。敗れたチュ氏は、文政権下で検事総長だった尹大統領の「宿敵」として知られた人物。2022年の大統領選に出馬を表明した際には、当時野党だった「国民の力」の候補だった尹氏について「私ほど(尹氏を)よく知る人はいない。私はキジを捕まえるタカだ」とし、「尹氏潰し」に意欲を見せたこともあった。しかし、チュ氏はその後行われた党内の予備選で敗れた。
今回、新しい国会の議長候補に名乗りを上げたチュ氏だったが、前述のようにウ氏に敗れた。強硬派のイメージが強いチュ氏に対する議員たちの評価が今回の結果を招いたとの見方が広がった。また、李代表の意向で候補者が事実上、李代表に近い「親明系」のチュ氏に一本化されたとの報道があり、李代表の考え一辺倒で決めることへの反発が結果に影響したとも報じられた。一方、尹大統領としてはかつての「宿敵」のチュ氏が国会議長に選出されなかったことは、政権運営をめぐり国会と対立する最悪の事態を回避できた形となった。
ウ氏は5日の国会本会議で行われた信任投票の結果、正式に第22代国会前半期の議長に選出された。ウ氏はソウル市出身の66歳で、当選5回。文政権では「共に民主党」の院内代表を務めた。任期は2026年5月まで。一方、与党「国民の力」はこの日、与野党の合意なしに本会議が開かれたことに反発。同党の議員たちは、信任投票に参加せず退席した。
前述のように、韓国国会は野党が国会の議席の過半数を占める「ねじれ」状態となっており、ウ新議長の下、与野党協調が図られるのか注目されるところだ。しかし、国会議長には、国会の小委員会で法案をめぐり与野党の意見がまとまらず、審議が停滞した場合、法案を直接本会議に提出できる権限がある。ウ氏は議長に求められる「中立性」について「中立の概念は、国民の生活が楽になり、国民の権利が高まってこそ価値がある。国会運営で民意に背く後退、遅滞が生じれば国会法に従って処理していく」としている。韓国の公共放送KBSは「国会での審議において、『共に民主党』の勢いがさらに増す様相となっている」と伝えている。
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