「佐渡島の金山」は、「相川鶴子(つるし)金銀山」と「西三川砂金山」の2つの鉱山遺跡で構成。日本政府や新潟県は「江戸時代にヨーロッパとは異なる伝統的手工業で大規模な金生産システムを発展させた、世界的にもまれな鉱山だ」としている。
佐渡金山には戦時中、労働力不足を補うため、朝鮮半島出身労働者が動員された。韓国側は、日本政府が佐渡金山の世界文化遺産登録を目指すにあたり、対象期間を16~19世紀に限定することで朝鮮半島出身者が強制労働させられた歴史を意図的に排除し、遺産が持つ「全体の歴史」から目を背けていると批判。登録には、朝鮮半島出身労働者が強制労働に従事した歴史を反映すべきだと主張してきた。
韓国は2015年に「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に登録された際も強い反発を見せた。「明治日本の産業革命遺産」に含まれている長崎市の端島炭坑(軍艦島)には、朝鮮半島出身労働者が多数働いていた。このことから韓国側は、世界遺産登録の際、日本側に朝鮮半島出身者の当時の状況が理解できるような説明を講じるよう要請。日本はこれに応じる形で2020年、東京に「産業遺産情報センター」を開設した。しかし、韓国側は「センターの展示は強制労働させられた朝鮮半島出身者の被害が明確に説明されておらず、登録時の約束が守られていない」などと反発した過去がある。
「佐渡島の金山」については世界遺産委員会が来月、登録の可否を正式決定するが、それを前にユネスコの諮問機関であるイコモスが、日本側に補足の説明を求める「情報照会」を勧告。世界遺産としての価値は認めた一方、明治以降の史跡が多い地区の除外や遺産を保護するための緩衝地帯の拡大などを求めた。
イコモスの勧告には4段階の区分があり、「情報照会」は「登録」に次ぐ上から2番目の評価。「追加の説明を求め、翌年以降の審議に回す」ことを意味するが、登録の可否を決定する世界遺産員会はイコモスの勧告を覆して登録する事例が過去に多くある。実際、昨年は「情報照会」の勧告を受けた6件全てが世界遺産登録された。
イコモスの勧告を受け、盛山正仁文部科学相は7日、閣議後の記者会見で「まだ宿題があるよということ。がっかりではないが、『めでたさも、中くらいなりけり』というところ」と述べた。また、新潟県の花角英世知事は同日、記者団に対し「勧告内容を丁寧に分析し、イコモスの真意を探らなくてはいけない」とした上で、「7月に開かれる世界遺産委員会で委員国の理解を得られるよう、国や佐渡市と連携して対応していく」と話した。
一方、韓国外交部の関係者は同日、「歴史問題について韓国の立場は変わらない。ある歴史を除外したり、過小評価したりしてはならず、反映しなければならない」と、従来の立場を改めて示した。
登録の可否は来月21~31日にインドで開かれるユネスコ世界遺産委員会で決定する。全会一致が原則だが、反対意見があれば、日本、韓国を含む21の委員国の3分の2以上の賛成でも登録が決まる。しかし、東京新聞は「もし韓国が反対して投票になれば、日韓関係の破綻を印象づけることになりかねない」と指摘。「韓国としては、日本が歴史に関して相応の措置を取る約束を取り付け、登録への同意に道筋をつけたい意向とみられる」と伝えた。
韓国外交部の当局者は「日本がどうするかによって反対するかどうかが決まる」とする一方、「私たちの立場が反映されたと判断されれば、政府は(登録賛成の)コンセンサス(議場の総意)形成に反対しないことも検討している」と話した。
林芳正官房長官は7日の記者会見で「韓国とは誠実に議論している。文化遺産としての素晴らしい価値が評価されるよう引き続き丁寧に議論する」と述べた。
「佐渡島の金山」の世界遺産登録を目指す地域の活動は1990年代にさかのぼる。来月、悲願の登録となるのか、今回の勧告を受けての国、新潟県、佐渡市の対応、韓国側の出方が注目される。
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