<W解説>韓国南東部沖に石油・ガス埋蔵の可能性、大統領が自ら発表も、冷静な報道が目立つ理由
<W解説>韓国南東部沖に石油・ガス埋蔵の可能性、大統領が自ら発表も、冷静な報道が目立つ理由
韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は今月3日、韓国南東部のポハン(浦項)沖の日本海に大量の石油と天然ガスが埋蔵されている可能性があることを明らかにした。近く試掘に着手するという。尹大統領は商業開発を目指す意欲も示したが、韓国政府は試掘の成功確率を20%程度としており、韓国紙のハンギョレは「(石油・ガスの)『存在の可能性』だけでバラ色の未来を描くことは難しいというのが専門家らの反応だ」と伝えている。

3日に記者会見した尹大統領は、「昨年2月、トンヘ(日本海)のガス田周辺に多くの石油ガス田が存在する可能性が高いとの判断の下、世界最高水準の深海技術評価専門企業に物理探査深層分析を依頼した」と明らかにした上で、「(浦項市のヨンイル湾沖に)最大で140億バレルに達する石油とガスが埋蔵されている可能性が非常に高い」と述べた。尹大統領が話した、物理探査深層分析を行ったのは米国のエネルギー探査専門会社のアクトジオ。ビトール・アヴレウ代表がこのほど訪韓し、7日、記者会見した。アヴレウ代表は「このプロジェクトの有望性は相当高い。なぜなら、私たちが分析したすべての油井に、石油とガスの存在を暗示するあらゆる要素が備わっているからだ」と強調した。また、アヴレウ代表は「この有望性を鑑みて、既に世界的な石油関連の企業が大きく注目している」とも述べた。

韓国は日本同様、天然資源に乏しい国で、1960年代から海底油田やガス田の探査を続けてきた。1973年の第1次石油危機を受け、当時のパク・チョンヒ(朴正熙)政権は独自の石油需給に向け、浦項市のヨンイル湾沖で海底を掘削するボーリング作業を進めた。76年に朴大統領は「浦項沖で初めて石油が採掘された」と発表し、歓喜が高まったが、政府は結局、翌年に「経済性がないものと判明し、ボーリングを中断した」と発表した。1990年代後半には、日本海で4500万バレル規模のガス田を発見したが、2021年で商業生産が終了した。

尹大統領は3日の会見で、浦項沖の日本海に埋蔵されている可能性が高い石油と天然ガスの量は最大140億バレルと見込まれると発表。これは、韓国の天然ガスの消費を最大29年、石油の消費を最大4年まかなえる量だ。

尹大統領の説明によると、今年末からボーリング調査に入り、来年上半期には詳しい結果が出る見通しという。尹大統領は、2035年頃から商業開発を開始する可能性にも言及したが、産業通商資源部(部は省に相当)の関係者は試掘の成功確率は20%程度と明らかにした。

韓国メディアの中には「海底に眠っている資源総額は、サムスン電子の時価総額の5倍」と伝えているところもあるが、「韓国南東沖の石油・ガス開発は勇み足?」(聯合ニュース)、「経済性評価は時期尚早」(ハンギョレ)などとおおむね冷静な報道が目立つ。聯合ニュースは、今回、大規模な石油・ガス埋蔵の可能性が高いと発表された鉱区は、昨年、オーストラリアの資源大手ウッドサイド・エナジーが「将来性がない」として共同探査事業から撤退していたことを報じた。ハンギョレもこれを報じ、「ウッドサイドの2023年の年次報告書には韓国を含め、カナダ近海、ペルー、ミャンマーなどから『もはや将来性がないため』撤退すると記されている。事業性がないと判断したため撤退すると読み取れる」と指摘した。こうした報道に対し、韓国産業通商資源部は、ウッドサイドが22年6月にオーストラリアの資源大手BHPと合併し、既存の事業を整理する中で事業撤退に至ったもので、「深層評価によって将来性がないと結論を下したという解釈は事実に反する」と反論した。

また、政府が試掘の成功確率を20%程度としていることから、最大野党「共に民主党」からは「失敗の可能性が高く、税金の無駄遣いになる」との批判が出ている。ハンギョレは9日付の社説で「エネルギー資源の95%ほどを外国に依存する韓国が、国内で大規模なエネルギー資源の開発に成功するのであれば、本当に喜ばしいことになるだろう」とした一方、「ボーリング調査には少なくとも5000億ウォン(約550億円)が必要であり、場合によっては全額を失ってしまう可能性もある」と懸念を示し、「予算承認権を持つ国会が精密検証するのは当然のことだ」と主張した。

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