ミッテ区に設置の慰安婦像は、ドイツの韓国系市民団体「コリア協議会」が中心となり2020年9月に設置された。同協議会の事務局近くの区の公用地にこの像が設置された当時、ドイツ国内には既に2体の像が設置されていたが、いずれも場所は私有地だった。しかし、初めて公共の場所に設置されたことから波紋を広げることとなった。像の碑文には「日本軍はアジア太平洋地域の無数の少女や女性を強制連行し、性奴隷にした」などと事実に反する記載もある。日本政府はドイツ側に撤去を働きかけ、2020年10月にミッテ区長は一旦、撤去命令を出した。しかし、市民団体側は「この像は戦時下における女性への性暴力をテーマとしたもので、日本に特化したものではない」と主張した。結局、区長は撤去命令を撤回し、区は像の設置期限を2022年9月28日まで延長。その後は、法的根拠なしに区の裁量により容認された状態が続いている。
この像をめぐっては、2022年4月に行われた日独首脳会談で、岸田文雄首相がドイツのショルツ首相に撤去に向けて協力を依頼したこともあった。首相自らが要請したことは極めて異例のことだった。しかし、このまま像の設置を欧州の主要国であるドイツで許せば、誤った歴史が国際社会に根付くことになりかねないという日本政府の危機感が背景にあったものとみられている。だが、像の管轄はミッテ区で、ドイツ政府として介入できる余地は少ないことから、ショルツ首相が当時示した反応は薄かったという。
現在まで、設置が続いてきたこの慰安婦像だが、ベルリンのウェグナー市長が先月16日に上川陽子外相と会談した際、「変化を起こすのが重要だ」と述べたことから、像の撤去を念頭に置いた発言ではないかとの見方が広がった。一方、設置したコリア協議会は「日本政府の圧力に屈した」と強く反発した。管轄区(ミッテ区)役所の行政に市(ベルリン市)が干渉することにも異議を唱えた。
聯合ニュースによると、ミッテ区の区役所は今月18日(現地時間)、前述した像の碑文をめぐって続いてきた協議が不調に終わぅたことから、設置許可を延長できないとの立場を示した。聯合は「設置から約4年で撤去の危機に瀕している」と伝えた。前述のように、像は延長期限を迎えた2022年9月28日以降はミッテ区による裁量での「容認」を受け設置が維持されているが、その容認期間も今年9月に満了する。コリア協議会は「碑文の修正をはじめ、すぐにでも協議する準備ができている」とし、区役所との協議の場を設けるよう求めている。
一方、イタリア・西部サルデーニャ島の公有地には今月中旬、新たに慰安婦像が設置された。正義連が昨年12月に地元自治体に設置を提案し、今年1月に議会の承認を受けたという。設置場所は観光客も多く行き来する海辺で、22日には正義連が除幕式を行う。
しかし、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的解決」を確認した2015年の日韓合意では、国際社会での非難や批判は控えると約束しており、慰安婦像の第三国の設置は、こうした立場とも相いれないことから、日本政府は各国に設置されている慰安婦像の早期撤去を長年求めている。だが、像は2011年12月に正義連によりソウルの日本大使館前に置かれて以降、韓国内外に次々と設置された。聯合ニュースによると、海外の設置は今回のイタリアに建てられた像が14体目になるという。
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