ソウル市カンソ(江西)区でコーヒー専門店を経営する30代のキムさんは、アルバイトの勤務時間を週15時間未満に分けて雇用する、いわゆる「小分け採用」をするかどうかで悩んでいる。来年の最低賃金が1万ウォンを突破したことによるものだ。

勤労基準法上、週15時間以上働く労働者には週休手当てが支給されるが、これを回避するための措置だ。1万ウォン台の最低賃金に加え、週休手当てまで支給すると自営業者としては人件費の負担がさらに大きくならざるをえないためだ。最低賃金委員会は12日、来年度の最低賃金を今年より1.7%引き上げた1万30ウォン(約1151円)に決めた。

店主のキムさんは「来年は最低賃金が据え置きになると思っていた。今の水準でも採用が難しく、すでに時給は1万ウォン(約1148円)以上支給している」と語り、「週休手当てを含めると現在の時給は1万1000ウォン(約1263円)に満たないが、来年から最低賃金が1万30ウォンに引き上げられたら、事実上時給1万2000ウォン(約1378円)以上になる。週15時間以内の勤務時間になるように「小分け採用」をしようかどうか悩んでいるのはそのため」と吐露した。さらにキムさんは「人件費の他にも他の固定費が増え続けている」と話し、「人件費まで増えれば良質の働き口は減っていくだろう」と指摘した。

コンビニエンスストアでも最低賃金の引き上げに対応し小分け採用を考えたり、夜間の営業をやめる事例が増えるものとみられる。

キョンギド(京畿道)ハナム(河南)市でコンビニエンスストアを経営する30代の店主は「数人を採用して1人当り週14時間30分ずつ働いてもらおうと思っているが、ものすごく悩んでいる」と語り、「最低賃金の引き上げを毎年行うならば、少なくとも週休手当てを廃止するのが正しいのではないか」と話した。

全国コンビニエンスストア加盟店主協議会のシム・サンベク共同代表は「単純に来年の最低賃金が1万ウォンを超えたことが問題ではなく、この5年から6年間にかけて最低賃金が急激に上がったことが問題」と述べ、「人件費の負担増で夜間の営業をやめる経営者がさらに増えることになるだろう」と批判した。

ソウル江西区と京畿道プチョン(富川)市でインターネットカフェを経営する30代のイさんは「現在の最低賃金でも高い水準」と語り、「インターネットカフェは最近電気代や食料品代など全てが値上げし、経費負担が重くのしかかっている」と話した。 続けてイさんは「韓国政府が物価上昇を抑えると言いながら、最低賃金を1万ウォン台に引き上げたのはつじつまが合わない話」と指摘した。

従業員たちの意見は多少食い違っている。最近の物価高の状況を考慮すると最低賃金の引き上げを歓迎する意見が大多数だが、一部の従業員はより柔軟な適用が必要だと主張しているという。

ソウル江西区のコーヒー専門店で1年6ヶ月間勤務している20代のキムさんは「最低賃金の引き上げですべてのアルバイト従業員が同じ賃金を受け取ることになる」と話し、「経験者でより多く受け取ることができる人もその分だけ受け取れないことになる。無理に最低賃金だけを上げるよりも、柔軟に能力給などの制度にしてほしい」と語った。

業界でも、自営業者にとって経営に直結する従業員の最低賃金を一括的に引き上げることが正しいのかとの指摘が多い。

全国商人連合会のイ・チュンファン会長は「経験のある従業員にはより多く支払われるべきなのに、経験がないのに高い給与が支払われるようになると事業主の立場ではそれ自体が損害」と述べ、「今年だけでなく毎年最低賃金が引き上げられており、そのため経営者としては苦しい状況が累積し続けている」と訴えた。
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