韓国水力原子力をはじめとする韓国の原子力企業が24兆ウォン(約2兆7100億円)規模のチェコ原子力発電所の第2期プロジェクトの優先交渉権対象者に選定され、原発業界の関心はすでに来年3月に予定されている本契約の支障のない締結と、次の原発事業推進国家に向いている。

優先交渉権をかけて最後まで争っていたフランス電力公社(EDF)が有利だとの世間の評価を覆(くつがえ)し、チェコ原発事業から受注のほとんどの段階を終え、「K原発」の実力そのものは立証した。現実的に原発の輸出が可能な国家は5か国(ロシア・中国・フランス・米国・韓国)だけで、特に安保を理由に中ロの事業者を除く西側市場に限ると米国・フランス・韓国の3者が対決した構図だが、ここで競争力を立証したのだ。約300基と推算される世界の新規原発建設市場で一定以上の受注量確保が期待されている。

しかし、実質的な成果のためにはまだ解消しなければならない課題も残っている。2009年のアラブ首長国連邦(UAE)への原発輸出の当時から続いてきた米国のライバル企業ウェスティングハウス社との知的財産権(IP)訴訟はいまだに続いており、国内外の一部での事業性に対する懸念もK原発が解決しなければならない課題として残っている。

解決すべき最優先の課題は、米ウェスティングハウス社とのIP訴訟だ。ウェスティングハウス社はチェコの原発受注合戦で早期に脱落したが、韓国水力原子力の単独輸出は不可能だとし、米国の裁判所での訴訟を続けている。韓国製原子炉は自社の技術をもとに開発されており、米国の輸出統制法によって米国政府の許可なしには輸出できないとするのが同社の主張だ。

米裁判所は昨年に行われた1審で、知的財産権の所有主体が政府であるために、民間企業のウェスティングハウス社が訴訟の主体にはなりえないとし、輸出禁止の仮処分訴訟を却下した。しかし控訴が進行中であるだけに依然として火種は残っている。チェコ現地の一部でも、来年の初めの韓国水力原子力との本契約に先立つ課題のひとつとして知的財産権訴訟問題を挙げている。

韓国水力原子力は、韓国製原子炉の開発初期にウェスティングハウス社の支援を受けていたが、ARP1400などの現行モデルは完全に独自開発したものだと主張している。しかし、その出発点はウェスティングハウス社からの技術伝授だったのが事実だ。また、原発は政治的利害関係まで考慮された事業であるため、米国と争うこと自体が今後の原発輸出に大きな不安要素になり得る。実際に、チェコの時と同様の条件で行われた2022年のポーランド政府の原発事業受注戦では、ウェスティングハウス社が韓国水力原子力に対する知的財産権をめぐる攻勢とともに事業権を獲得している。

チェコが今回韓国水力原子力を選んだのは、米韓間で行われている訴訟合戦が今回の事業に大きな支障がないとの判断の下で行われたことだ。また、米韓両政府の協力体制の下、韓国水力原子力がウェスティングハウス社とこの件について最終調整中であると伝えられた。しかし、安心するのはまだ早い。特に今年11月には米国の大統領選挙が予定されており、「自国優先主義」の傾向が強いトランプ前大統領の再選可能性が高いだけに、K原発にも「トランプリスク」が及ぶ恐れがある。

業界の関係者は「チェコとの本契約だけでなく、今後のほとんどすべての西側の新規原発事業でウェスティングハウス社と競合するため、今回の知的財産権問題は必ず解決しなければならない宿題」と述べ、「韓国政府でも誰が米国の新大統領になっても米韓原発同盟体制が続くよう、万全の準備をする必要がある」と述べた。

チェコとの本契約の際、各種の不安要素を十分に考慮して事業性を確保しなければならないことも重要な課題だ。今回のチェコ原発事業の優先交渉権対象者の選定過程で、韓国水力原子力がフランス電力公社に比べ60%の価格で入札し、低価格で受注したのではないかとの懸念混じりの分析が出ている。韓国水力原子力をはじめとする企業は低価格受注の懸念を一蹴したが、15年前後かかる原発事業の特性上、さまざまな不安要素が発生する可能性がある。韓国がアラブ首長国連邦で行った「オンタイム・オン・バジェット(予算内・納入期限内での施工)」の経験がプラスになりチェコの原発事業を受注したが、国際的には英国やトルコのように事業が遅延・停滞する場合もある。

特にチェコとの交渉過程で、韓国輸出入銀行など国策金融機関の資金支援負担が大きくなる可能性があるため、金利変動などについても慎重に見守らなければならないとするのが専門家らの提言だ。韓国水力原子力などはアラブ首長国連邦への原発輸出の際も金融支援の要請を行った。ウェスティングハウス社との知的財産権交渉がアラブ首長国連邦の時のように一定のロイヤリティを支払う方式で終結する可能性がある点もチェコ原発の事業性確保にとって悪材料になりうる。

優先交渉権の主体である韓国水力原子力は、収益性のある事業の推進に自信を持っている。韓国水力原子力の関係者は「ヨーロッパの原発規制と厳格な労働市場規定など、チェコ現地の条件と長期プロジェクトの特性を全て考慮して事業計画書を提出した」と述べ、「まだ最終契約金額を予想することは難しいが、予想事業費が当初予想の15兆ウォン(約1兆6900億円)より高い24兆ウォンに上がったことは金融業界でも肯定的に捉えている」と伝えた。
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