サムスングループは2015年、創業家の経営権継承に絡み、第一毛織とサムスン物産の合併を進めた。当時サムスン物産の株式の7.12%を保有していたエリオットは、合併比率がサムスン物産の株主に不合理だとして合併に反対したが、株主総会で可決された。
これについてエリオットは韓国政府がサムスン物産大株主で韓国政府系の国民年金公団に賛成票を投じるよう圧力を行使したと指摘。韓米自由貿易協定(FTA)で定めた義務に韓国政府が違反したとし、18年7月、投資家対国家の紛争解決(ISDS)の手続きとしてPCAに仲裁を申し立てた。
PCAはエリオット側の主張を一部認め、韓国政府に5358万6931ドルの賠償金と遅延利息の支払いを命じた。賠償金に利子と裁判費用を合わせた額が約1億782万ドルとなった。
韓国政府は韓米FTAの「管轄違反」を根拠に、PCAが裁判を行う権限のない事件について裁定したと主張。裁定の取り消しを求める訴訟を英国裁判所に起こした。
英国裁判所は、韓国政府が根拠として挙げた韓米FTAの条項について、英国の仲裁法上、裁判権があるとみなされる領域ではないとし、却下の決定を下した。
法務部は関係官庁と控訴について検討する方針だ。
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