<W解説>「異例」だった今年の韓国・光復節(解放記念日)
<W解説>「異例」だった今年の韓国・光復節(解放記念日)
今月15日、韓国は光復節(日本の植民地支配からの解放記念日)を迎えた。例年同様、政府主催の光復節記念式典が開かれたが、今年は「異例」が際立った。また、公共放送のKBSがこの日放送した内容をめぐって物議を醸す事態にもなった。

朝鮮半島は日本が1945年8月15日に太平洋戦争に敗れたことで植民地支配から解放された。韓国では、奪われていた主権を回復した日との意味で8月15日を「光復節」と呼ぶ。祝日となっており、毎年、政府主催の記念式典が開かれる。

今年も例年通り開催されたが、「異例」な点がみられた。一つはユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の演説だ。光復節の大統領演説では、例年、対日関係に関して言及があるが、尹大統領はこの日、日韓関係に触れることはなく、演説の大半を南北統一に向けた「ビジョン」の説明に割いた。「日本」という言葉が登場したのは、韓国の1人当たりの国民総所得が2023年に初めて日本を上回ったことを紹介する場面でのみだった。

尹大統領は演説で、「私たちには必ず解決しなければならない重大な歴史的課題がある。それが統一だ」と強調。北朝鮮に対し「対話の扉は開かれている」とした上で、「非核化に歩み寄れば、政治的、経済的な協力を始める」と呼び掛けた。また、演説の中で新たな統一推進戦略「8・15統一ドクトリン」を発表。(1)国内での自由の価値観の醸成(2)北朝鮮住民の変化(3)国際社会と協力により南北統一を目指すというもので、尹大統領は「北朝鮮の未来の世代に、自由統一の夢と希望を抱かせなければならない」と述べた。

尹大統領が演説で対日関係に言及しなかったことに、日本のメディアはこぞって「異例」と伝えた。一方、韓国の通信社、聯合ニュースは「韓国は経済成長を通じて日本と対等な力をつけており、韓日関係についてあえて触れないのは日本を乗り越えたという『克日』への自信の表れといえる」と解説した。聯合によると、大統領室の関係者は「克日」の定義に関連し「過去の歴史に対しては堂々と指摘し、改善していかなければならないが、我々がさらに大きくなり、より大きな未来を見つめながら国際社会の歓迎を受け、日本との協力を牽引(けんいん)していくことが真の克日」と強調したという。

式典で「異例」だったのはこれだけではなかった。式典には朝鮮独立運動に関わった運動家とその子孫、遺族からなる「光復会」と最大野党「共に民主党」など野党が出席しなかった。光復会などの独立有功者団体が、政府主催の光復節の記念式典に出席しないのは初めてのことだった。政府は今月、中部のチュンチョンナムド(忠清南道)チョナン(天安)市にある独立記念館の新館長にキム・ヒョンソク氏を就任させたが、光復会などはキム氏が日本による植民地支配を正当化する「ニューライト(新保守)」思想の持ち主だとして反発。任命が撤回されなければ式典に出席しない方針を示していた。この日、光復会はソウル市内で独自の記念式典を開いた。

また、この日未明にKBSが放送した内容が韓国国民の怒りを買っている。午前0時から放送された「KBS中継席」では、オペラ「蝶々夫人」のソウル公演を録画放送。「蝶々夫人」は19世紀末の長崎を舞台に、米海軍士官の夫を一途に待ち続けた蝶々さんの物語だ。作品では蝶々夫人が着物姿で登場するほか、結婚式の場面では日本の国歌「君が代」が流れる。視聴者からは、光復節に日本色が強いオペラを放送するのは不適切だとして批判が相次いだ。KBSは声明を発表し「6月29日に公演が録画され、7月末に放送予定だったが、五輪中継で延期され、光復節の未明に放送されることになった」と説明。また、パク・ミン社長は「国家的に重要な日に、国民の皆さんに不快感を与えたことについて、執行部を代表して心よりおわび申し上げる」と謝罪した。

政府に批判的な論調で知られ、尹政権についてはかねてから日本寄りだと非難している韓国紙のハンギョレは、16日の社説で「尹政権の親日的な振る舞いにより光復節の式典が二分された状態の下で、公共放送であるKBSが光復節の日の最初(未明)の放送で日本色が強いオペラを放送したことは果たして偶然なのか、市民が問いかけている」と疑問を呈し、「この政権の親日基調は確信に満ちたかのように体系的になされている」と不信感を募らせた。

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