<W解説>退任間近に訪韓し、首脳会談を行った岸田首相=韓国での受け止めは?
<W解説>退任間近に訪韓し、首脳会談を行った岸田首相=韓国での受け止めは?
岸田文雄首相が今月6日、韓国を訪問し、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領と会談した。両首脳は、来年の国交正常化60周年を見据え、持続的に協力を強めていくことを確認。双方の入国手続きを円滑化するための検討を開始することでも一致した。岸田首相は近く退任することが決まっており、韓国では、一部の市民団体が会談に反対の声を上げていた。韓国紙のハンギョレによると、韓日歴史主義平和行動のパク・ソグン共同代表は、「任期末の首相を呼んで首脳会談をするというのは正気か。『卒業遠足』のために国費を浪費している」と批判。会談後も野党や尹政権に批判的なメディアは今回の会談開催を非難している。

「戦後最悪」と言われた日韓関係は、2022年5月に尹大統領が就任したことで改善に向け動き出した。昨年3月には尹政権が、日韓最大の懸案だった元徴用工訴訟問題の解決策を発表。これを機に岸田首相も関係立て直しに注力し、昨年3月に、日韓両首脳が相互訪問する『シャトル外交』が約12年ぶりに再開した。日韓関係は劇的に改善し、今や、政界のみならず、経済、スポーツ、そして民間同士の交流が活発になっている。

岸田首相が尹大統領と会談するのは今回が12回目、シャトル外交としての訪韓は昨年5月以来となった。

会談は約1時間にわたって行われた。尹大統領は「経済と安保をはじめとする様々な分野で、両国政府間の協議体が全て復元された」とし、「このような肯定的な動力を続けていくことが重要だ」と強調した。一方、「韓日関係には依然、難しい課題が残っている」とした上で、「さらに明るい未来に向かう歩みを続けられるよう、双方が前向きな姿勢で共に努力していくことを期待する」と述べた。また、尹大統領は、来年、日韓国交正常化60周年を迎えることを挙げ、両国が力を合わせることで「両国関係がさらに飛躍する転機をつくれるだろう」と強調した。これに対し、岸田首相は、「日韓の間には様々な歴史や経緯もあるが、未来に向けて韓国と協力していくことは極めて重要だ」と述べた。

会談では、日韓関係の改善を国民が実感できるよう、両国間の入国手続きを円滑化する取り組みについて検討することで一致したほか、朝鮮半島を含めた地域の平和と安定に向けて、日韓両国や日米韓3か国で幅広い連携を進めていくことも確認した。入国手続きの円滑化は、双方の国を訪れる観光客が入国審査を出発地で事前に行う「プレクリアランス(事前入国審査)」制度をそれぞれ導入する案を念頭にしたものだ。

岸田首相は今月の自民党総裁選後に退任する。首相として最後となる今回の訪韓は、次の政権でも良好な日韓関係を継続できるよう、環境を整備する狙いがあった。日本メディアが、日本政府関係者の話として伝えたところによると、訪韓は当初、日帰りとする案もあったが、首相が1泊2日にこだわったという。尹大統領は、会談後、大統領府本館で開かれた夕食会で、「岸田首相には日韓関係発展のために今後も力を貸してほしい」と呼び掛けた。岸田首相は「雨降って地固まる」のことわざを引用し、「日韓関係はこれまで激しい雨が降ったこともあるが、尹大統領と雨に濡れた道を共に足で固めてきたことが日韓関係の新しい始まりだった」と振り返った。岸田首相は今月、退任するが、会談後、記者団に対し「今後も日韓関係の重要性はいささかも変わらない。これからもいかなる立場でも力を尽くしていく」と語った。

今回の会談を受け、与党「国民の力」のソン・ヨンフン報道官は7日、論評を発表。「首相が変わっても、韓日関係がより発展した関係となるよう期待する」とした。一方、最大野党「共に民主党」のノ・ジョンミョン院内代表は、「今回の首脳会談は岸田総理への退任のプレゼントだ」と指摘。同党は従来から尹政権の対日政策を「屈辱外交」として批判しており、ノ院内代表は「このような屈辱外交で我が国民が得るものは何か。尹政権が得たことは日本からの称賛と岸田総理とのブロマンス(男性同士の近しい関係)だけだ」と批判した。

また、尹政権に批判的な論調で知られるハンギョレは7日付の社説で、尹大統領が今後、日本の新しい首相との間で関係を築いていくことを踏まえ「(韓国)政府は無理な『速度戦』を諦め、持続可能な両国関係を考えなければならない。国民の同意が得られない外交は砂上の楼閣(ろうかく)に過ぎない」と指摘した。
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