ソウル市内の病院の救急救命センターを訪れた患者=(聯合ニュース)
ソウル市内の病院の救急救命センターを訪れた患者=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】韓国で医師不足などの対策として政府が打ち出した大学医学部の入学定員増に反発して研修医が一斉に職場を離脱し、人手不足に陥った病院から受け入れを断られた救急患者が死亡するケースが相次ぐ中、医療界側が救急救命センターで働く医師の実名を公開し、「医療の混乱を防ぐために努力している方々に感謝」などと揶揄(やゆ)していることが9日、分かった。政府はこのような犯罪行為は容認できないとして警察に捜査を依頼し、厳しく処罰する方針を示した。 

◇「ありがたい医師」名簿 救急センター勤務医や軍医の実名も

 政府などによると、政府の方針に反発する医師らが作ったと推定される「ありがたい医師の名簿」というタイトルのホームページで、各病院の救急救命センターの勤務人数と一部の勤務者の名簿が公開されている。

 名簿には医師の実名とともに、「違法なストライキを中止し、患者のもとにとどまると決心したことに感謝します」などと、勤務を続ける医師を揶揄するような説明文が掲載されている。

 また、政府が派遣した軍医とみられる医師の実名も公開された。政府は救急医学専門医を含む軍医15人を病院に派遣したが、救命救急センターでの診療に対する負担などを訴え、全員が勤務を見合わせている。

◇一部の医師は対人恐怖症に 政府「警察に捜査依頼し厳しく処罰」

 保健福祉部はこのような内容を警察に通報し、捜査を要請する計画だ。

 同部の鄭允淳(チョン・ユンスン)保健医療政策室長は9日の会見で、「救急救命センターで勤務する医師の実名を悪意をもって公開するサイトが診療現場で勤務する医師の士気と勤労意欲を低下させている」とし、「患者の命を守る医師を萎縮させる、容認できない犯罪行為」と批判。捜査機関と協力し、厳しく処罰すると明らかにした。

 また、一部の軍医は個人情報を公開されたことで対人恐怖症に苦しんでいるとも伝えた。

 研修医が一斉に職場を離脱した今年2月以降、政府が復帰を促すたびに医療現場にとどまっている医師のリストがオンラインコミュニティーや秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」などで拡散されている。

 リストには研修医だけでなく医学部の教授や研修医の抜けた穴を埋める専門医の名前も掲載され、公開範囲も誰でもアクセスできるサイトにまで広がっている。

◇詳細な個人情報も公開 医療現場では患者の死亡事故相次ぐ   

 リストに名前が挙がった医師については、氏名のほかにも見た目の特徴や「ラジカルフェミニスト」「サイコ(パス)性向」など悪意のある表現が書き込まれた。

 携帯電話の番号や好きなプロ野球チーム、交際している異性、大学名、父親の名前、高校時代のいじめ被害、新婚旅行や産休の時期など詳細な個人情報が含まれているケースもある。

 このような情報が公開されたことで、研修医が医療現場への復帰をためらったり、同僚医師からいじめの標的にされることを恐れたりするようになるとの分析も出ている。

 一方、医療現場では病院から受け入れを断られて死亡するケースが相次いでいる。

 2日には南部・釜山で工事現場での転落事故で搬送された70代の労働者が手術を行う医師が見つからずに死亡し、5日には南西部・光州で心肺停止の状態で見つかった女子大生が直線距離で約100メートルの大学病院から受け入れを断られ、別の病院に運ばれたが重体に陥った。

 猛暑が続いた先月4日には、熱性けいれんで倒れた2歳の女児が救命救急センター11カ所に受け入れを断られた後に意識不明となり、1カ月が過ぎた今も意識を回復していない。 


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