忠清南道泰安郡で養殖業を営むキム・ジンホさんが撮影したいけすの写真
忠清南道泰安郡で養殖業を営むキム・ジンホさんが撮影したいけすの写真
「これまで生きてきてこんなことは初めてだ。来年はもう養殖はしない。」

チュンチョンナムド(忠清南道)テアン(泰安)郡の沖合で25年間養殖業で生計を立ててきたキム・ジンホさん(仮名)は「もう本当にこれ以上養殖業は続けられない」と嘆いている。2万平米規模の養殖場を営むキムさんは10日、「今日も死んだクロソイの稚魚をすくい上げた。80%から90%が死んでいた」と語った。さらに「私の養殖場は比較的規模が小さく、5億ウォン(約5300万円)程度の被害だったが、うちよりも大規模な養殖場では被害が数十億ウォンに達する」と吐露した。

泰安郡の養殖業は今後も高い海水温にともなう深刻な被害が続くとの悲観的な見通しから「共同廃業」を推進している。団体で養殖業の免許を返納して廃業することを意味する。韓国ではこれまで前例のないことだ。

アンミョンド(安眠島)海産魚養殖協会に属する養殖業者らは先月末、泰安郡役所と海洋水産部、地方区のソン・イルジョン議員などと懇談会を開き、共同廃業の意思を明らかにした。会議に参加したイ・ジョンスさん(仮名)は「この町で養殖業を営む人々は廃業すると考えて差し支えない」と語り「私は保険に入っても30%から40%しか補償を受けることができないが、どうせ補償率が低いからと保険に入らなかった業者らは甚大な被害を受けた」と話した。実際に泰安郡を含めた養殖場の養殖水産物災害保険の加入率は、今年基準で34%に過ぎない。イさんは「韓国政府も被害支援をしてくれているが、とても足りない」と語り、「毎年このような被害を受けて借金ばかり増やすよりは、皆で免許を返納しようと決めた」と話した。

養殖業者らは韓国政府に共同廃業の意思を伝え、補償の要求も行った。手の施しようがない自然災害により廃業することになったため、韓国政府による支援が必要だと主張している。

しかし、実際には彼らに対する廃業補償には法的根拠がないのが実情だ。海洋水産部が業者らの要求に対し難色を示している理由でもある。

これに対し、ソン・イルジョン議員は高い海水温による被害のために廃業する養殖業者に対し、廃業支援金を支給することができる法案の整備を準備している。議員室の関係者は「気候変化にともなう養殖魚類のへい死は今後も減る可能性がほとんどない」と述べ「養殖産業発展法の改正を通じて養殖業を続けることが難しい業者を対象に、廃業支援金を支給するなどして業者に対し選択の幅を広げようとしている」と語った。

韓国政府は養殖業者の被害に対して、他の対策を用意している。今年高い海水温による被害を受けた養殖業者のうち、被害調査と自治体復旧計画が完了した忠清南道、キョンサンナムド(慶尚南道)、チョルラナムド(全羅南道)など352か所に災難支援金139億ウォン(約14億7000万円)をチュソク(秋夕/旧暦の8月15日)前に支給することを決めた。

来年度予算案では養殖業の競争力強化のための予算を増額した。スマート養殖標準化モデルの開発、品種別スマート・自動化設備のサポート、気候変動に対応した設備をサポートする環境にやさしい養殖漁業の育成など、養殖業関連の予算を今年度の369億ウォン(約39億1000万円)から来年度には488億ウォン(約51億7000万円)に増やす方針だ。

海洋水産部の関係者は「異常気象に対応し養殖業の競争力を高めることができるよう予算を増やした」と述べ「より中長期的に海水温の変化に対応した策を用意しなければならないとの問題意識がある」と述べた。

それでも養殖業者らは「来年、再来年はどうすればいいのか」と嘆いている。イさんは「なぜ私は家業を継いで養殖業をすることにしたのか」と語り、「このように養殖業者が続々と廃業すれば、結局は魚の値段も上がらざるを得ない。韓国政府と国民には我々の困難を理解して欲しい」と訴えている。
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